神に選ばれなかった者達 前編

図書室に着くと、私は借りていた本を返却した。

しょっちゅう図書室に通い詰めている私は、そのカウンターに座っている図書委員とも顔馴染みである。

私は普段、読む本にこだわりはない。

文学でもノンフィクションでも探偵モノでも、自己啓発本でも、絵本でも雑学本でも、何でも読む。

その本が長ければ長いほど嬉しくなる。

本を読むのが好きと言うより、文字を読めるのが嬉しいのかもしれない。

更に、借りた本を家に持って帰って、お兄ちゃんに読み聞かせしてあげるのはもっと好きだ。

だから、しょっちゅう図書室に通っては、いつも必ず5冊、上限いっぱいまで借りる。

そして、必ず全部読んで返す。

今回借りていたのは、図書委員に勧めてもらった文学小説だった。

勿論、全部読みました。

借りていた、それらの本を返した後。

私は、目的の本を探して、本棚から本棚をうろうろしていた。

3年間、中学校に入学してからというもの、これまで色々な本を読んできたから。

何処にどんなジャンルの本があるか、熟知しているつもりだったけど。

さすがに今回の本は、探すのが初めてなので手間取った。

えぇと…あの本は…。

…すると、そこに。

「空音さん。こんにちは」

「ふぇっ?」

突然背後から声をかけられて、私は思わずびくっ、とした。

驚いて振り向くと。

「あ、ごめん…。びっくりさせちゃったかな」

「あ…秋本君…」

秋本義実(あきもと よしみ)。

彼は私と同い年で、隣のクラスの男子生徒である。

そして、私にいつも、おすすめの本を教えてくれる親切な図書委員でもある。

「空音さん、今日も来てくれたんだね」

「うん、ちょっと…まぁね」

「いつも来てくれて嬉しいよ。空音さんほど熱心に図書室に来てくれる人、あんまりいないから」

…うん、そうだろうね。

秋本君は私と同じで、珍しく本が好きであるらしく。

その本好きが高じて、図書委員まで務めているくらい。

「秋本君、この間勧めてくれた本、凄く面白かったよ」

さっき返してきた本のことである。

あれも、秋本君が勧めてくれた本だ。

「そうだったんだ、それは良かった。空音さんが好きそうな本だと思ったんだ」

ありがとう。

私は大抵、どんな本でも好きだけどね。

今回秋本君が勧めてくれたのは、魔法が使える世界で、魔法使いの主人公のお話だった。

「今日はもう、借りる本決まってるの?」

「あ、えぇと…」

「次、空音さんが来たらおすすめしようと思って、取っておいた本があるんだ。この間のファンタジー小説と同じ作者で…」

「ご、ごめん!秋本君。実は私、今日は別に借りたい本があるんだ」

「え?」

普段だったら、喜んで秋本君の勧めてくれる本を借りていっただろうけど。

残念ながら、今日はそうは行かないのだ。