神に選ばれなかった者達 前編

「えー?駄目なの?」

「うん、駄目なの」

「何で?」

…何で、って言われても…。

そんなことの為にお金を使いたくないから、というのが、いつもの理由。

だけど、そう言っちゃうと角が立つから…。

いつもの断り文句を口にする。

「ごめん。今日用事があって」

こう言うと、大抵の子は引き下がってくれる。

でも、今日は本当に用事があるのだ。

「えー?のぞみ、付き合い悪くない?」

「悪かったわね、私は忙しいの」

こういう時は、敢えて冗談めかして言うのがコツ。

ガチトーンで言っちゃうと引かれるから。

「何?用事って」

「ちょっと、図書室にね」

無論、学校の図書室のことである。

「図書室かー…。分かったよ、仕方ないな…。じゃ、また今度」

「そうね。また今度誘ってね」

何度誘われても、行かないと思うけどね。カラオケには。

クラスメイト達に手を振って、私は本当に、その足で図書室に向かった。

図書室に用事があるのは本当だから。

私は小学校の時から、図書室が大好きである。

最初に図書室を見た時から、大好きになった。

だって、無料なんだよ?

私は最初図書室のことを、本屋と同じだと思っていた。

好きな本を、お金を出して買うのだと。

でも違っていた。図書室は、本を貸し借りするところなんだって。

成程、じゃあ貸本屋みたいな場所なのか、と納得した。

でも、それも違っていた。

なんと図書室は、貸本屋と違って、無料で本を借りられるのだそうだ。

無料だって。なんて素敵な響き。

無料と聞くと、何でももらいたくなるのが貧乏人の性。

広い教室いっぱいの本棚。その本棚の中に、所狭しとたくさん詰まった本。

こんなにたくさんの本を、何でも、どれでも、いつでも、好きに、タダで借りられるんだって。

一回に付き5冊。2週間以内に返却すれば良いだけ。

図書室の仕組みが分かっていなかった私は、それを聞いて心底驚いた。

料金を取らずに、一体どうやって運営してるんだろう。この本は誰が、何処で買ってきたものなんだろう。

貸した本を、勝手に売られたらどうするんだろう?貸したまま帰ってこなかったら?いつか本棚から、本が消えてしまうんじゃないか?

あれこれ心配したものだが、(私にとっては)お金持ちのクラスメイト達は。

そもそも、図書室から本を借りパクするという発想はないらしい。

なんて平和な場所だろう。

こんな図書室が、私の育ったスラム街にもしあったら。

半日足らずで、本なんて一冊も残ってないと思う。

そして、一冊たりとも返す人はいないはずだ。

そもそもスラム街出身の子供は、文字が読めないから本も読めないしね。

…ともかく。

貧乏性の私にとって図書室は、まさにこの世の楽園のようなもの。

クラスメイト達は、図書室には特に興味がないみたいだけど。

私は中学校に入学した時から、この図書室に入り浸りである。

小学校の図書室よりも広くて、たくさんの本があって、静かな読書スペースもあって。

おまけに無料。

お兄ちゃんも連れてきてあげたいなぁ、とどれほど思ったことか。