神に選ばれなかった者達 前編

クラスメイト達の浪費家っぷりと怠惰っぷりには、ほとほと呆れ果ててしまうが。

それでも、購買で食べ物を奢ってもらうと言われては、断れない。

食べ物は、何にも代え難い貴重なものだからだ。

…え?あれだけ宿題をやって来ないクラスメイトを軽蔑していたのに、自ら片棒を担ぐのかって?

お黙りなさい。

食べ物は別。

私達兄妹はこれまで、食べ物を得る為なら、どんな汚いことでもやって来た。

私よりも…お兄ちゃんの方が、だけど。

そのお兄ちゃんの苦労を知っていたら、食べ物を得る機会をみすみす見逃すことは出来なかった。

とはいえ、あまりクラスメイトの前でガツガツしては、卑しい子だと思われてしまう。

私が卑しいのは紛れもない事実だけど、そのせいでクラスで孤立するのは嫌だった。

そこで私は、控えめな振りをしながら、購買でパンをせしめた。

購買部なんて、普段は滅多に、と言うか入学してからというもの、友達との付き合いでしか来たことがない。

購買の商品を、自分のお金で買ったことも一度もない。

だって高いんだもん。

パン一個、ジュース一個でこの値段。

このお金があったら、行きつけの超激安スーパーで、もやしが○袋も買える…。それにお豆腐と納豆も…。

そう思うと、どうしても手が出ない。絶対無理。

ここは高級スーパーだよ。

そんな高級スーパーの商品を、好きなだけ奢ってもらえるなんて。

出来るだけコスパの良い商品、大きなメロンパンと大きなクリームパンと、それからりんごデニッシュを買ってもらった。

本当はもっと欲しいけど、さすがに遠慮した。

三つも買ってもらっただけでも、充分ガツガツしてると思うけど。

今日の晩御飯、お兄ちゃんと一緒にこれ食べよう。





そして、その日の放課後。

その友達が、私を遊びに誘ってきた。

「ねぇのぞみ。今日帰り、一緒にカラオケ行かない?」

…カラオケ。

こういう誘いを受けるのは、初めてではない。

最初こそ、「カラオケに行こう」と言われた時は、首を捻ったものだ。

「カラオケって、何?」と。

リアルで、何それ美味しいの状態だった。

からおけ、って食べ物があるんだと思っていた。それを食べに行こうと誘ってるのかと。

ほら、唐揚げってあるじゃない?あれの親戚みたいな感じで。

後になって知った。

カラオケっていうのは、歌を歌いに行くところなんだって。

それを聞いた時はびっくりした。

何で歌を歌う為に、お金を払いに行くの?って。

…歌なんて、一人で勝手に口ずさんでれば良いんじゃないの?

驚きながらも、私にはとてもそんな余裕はないので、丁重にお断りしたものだ。

そして、今も。

「ごめん。今日無理」

両手を合わせて拝むようにして、私はそう言った。