神に選ばれなかった者達 前編

一体何の為の買い物か、知らされていなかった私は。

単純にお兄ちゃんと買い物に行けるのが嬉しくて、二つ返事で頷いた。

「うん、良いよ。…何を買いに行くの?」

「何だと思う?」

え?

何だろう…。…買い物でしょ?

「…今日のご飯、とか?」

お野菜が特売とか?お米が安いとか?

しかし、お兄ちゃんは頭を振った。

「違うよ。もっと良いもの」

「…良いもの…。…特売のじゃがいもとか…?」

「…食べ物じゃないんだよ。残念ながら」

えっ。

食べ物じゃないもので、良いもの…。

何だろう。食べ物が一番良いものじゃないの?

次点で、お洋服とか…。あ、暖房器具とか?

「じゃあ教えてあげるね。…制服だよ。学校の制服」

「…え…?」

「春から着る制服を買いに行こう。一緒に」

そう聞いた時、私はとても嬉しくなった。

私は小学校を卒業したから、今度はお兄ちゃんが学校に行く気になったんだ、と思ったのだ。

お兄ちゃんの年齢なら…高校かな。

「ほんと?制服着るの?」

「勿論」

私は、お兄ちゃんが学校の制服を着ている姿を想像した。

おぉ。似合う似合う。

「良かった…。お兄ちゃんなら、きっとどんな制服でも似合うよ」

「え?」

「学ラン?それともブレザー?ネクタイするの?」

ネクタイのある制服って、何だか凛々しくて格好良いよね。

でも、昔懐かしい学ランも捨て難いかも。

「お兄ちゃんなら、きっと、どんな制服でも…」

「えーっと…。何だか誤解してるみたいだけど、お兄ちゃんの制服じゃないよ」

「え?」

「のぞみの制服だよ。のぞみの、中学校の制服」

「…」

その時の私は、随分間抜けな顔をしていたに違いない。

お兄ちゃんが何を言っているのか、信じられない思いだった。

…何言ってるの。お兄ちゃん。

「私の…?…どういうこと?」

「小学校を卒業したんだから、次は中学校に進学するのが当たり前でしょう?」

…なんてこと。

まさかお兄ちゃんは、私をこのまま、中学校に進学させようとしてるの?

「何言ってるの…。お兄ちゃん、そんなの駄目だよ」

「何で?同級生はみんな、中学校に進学するんでしょう。だからのぞみも…」

「私はもう良いよ…!次はお兄ちゃんの番だよ」

二人共進学出来る余裕があるなら、私も喜んで中学校に行く。

だけど、そうじゃないんだから。

たった数年、私を小学校に行かせるだけでも、お兄ちゃんがどれほど一人で苦労してくれたのか知ってる。

「無理だったら、もう学校は諦める」と私が何度言っても。

お兄ちゃんはいつも、「のぞみは心配しないで。勉強、頑張ってね」としか言わなかった。

私にとってはあっという間の数年間だったけど、お兄ちゃんにとっては、苦難の日々だったに違いない。

小学校を卒業して、ようやくお兄ちゃんを学費の問題から解放してあげられると思ったのに。