神に選ばれなかった者達 前編

部室棟に隠れたまま、その日の夜が明けた。

私は、憂鬱な気分で目を覚ました。

…あの悪夢を見るようになってから、良い気分で目覚めたことなんてないけど。

「…はぁ…」

深々と溜め息をつきながら、私はお布団の上から起き上がった。

制服に着替えて、身支度を整えて部屋を出ると。

「おはよう、のぞみ」

「…お兄ちゃん…おはよう」

お兄ちゃんがいつも通り、アパートの小さなキッチンで朝ご飯を作ってくれていた。

「ほら、のぞみ。朝ご飯食べよう」

「…うん…」

夜の間に何が起ころうと、どんな夢を見ようと。

朝起きると、お兄ちゃんはいつだって、いつも通りだ。

私みたいに落ち込んでることも悲しんでることも、泣いているのだって見たことがない。

逆に私が泣いていたら、いつもすぐに駆け寄ってきて、慰めてくれるのに。

今朝のメニューは、ねこまんま卵ご飯。

お茶碗にご飯と、かつお節を少々、それから生卵をかけ、お醤油を垂らしていただきます。

生卵は一人一個、なんて贅沢は出来ないので、一個を二人で半分ずつ分けてある。

…いや、半分ずつ、じゃないかな。

正しくは、3分の2と3分の1ずつ、だ。

お兄ちゃんはいつもそう。一個しかないものを半分こにする時は、必ず私に多めにくれるのだ。

おにぎりだろうと肉まんだろうと、きっちり半分に分けた試しがない。

だから今日も、私のお茶碗には、卵がたっぷりかかってるけど。

お兄ちゃんの方には、ほんの一口分くらいしか卵がかかってない。

無論、私はこれまで何度も、このことに異議申し立てをしてきた。

「これは半分こじゃないよ」って。
 
しかしお兄ちゃんは、私が何を言っても何処吹く風なのだ。

「お兄ちゃん…。私のご飯に卵かけ過ぎだよ」

無駄とは思いつつも、今日も不満を口にしてみたが。

「え、そう?そう見えるだけで、ちゃんと半分に分けてるよ」

お兄ちゃんは、けろっとしてそう答えた。

…絶対嘘。

いつもそう。明らかに私の方に多く取り分けておいて、「均等に分けてある」と言い張ったり。

あるいは、「上手く半分に割れなかっただけだよ」とか言って言い訳するのだ。

負けじと、異論を申し立てようとしたけれど。

「あのね、お兄ちゃん…」

「さぁ、早く食べよう。急がないとのぞみ、遅刻しちゃうよ?」

「…う…」

もうこのお話はおしまい、とばかりに。

お兄ちゃんは先にテーブルについて、食べ始めた。

…結局、いっつもこうして、不平等な分配を受け入れるしかないのだ。

更に文句を言っても、「のぞみは成長期なんだから」とか、「女の子は栄養バランスが大事」とか、あれこれ言い含められるのは分かっている。

…男の子だって栄養バランスは大事だよ。ねぇ?