神に選ばれなかった者達 前編

しかし、嫌な予感は的中する。

それから二時間もしないうちに、再び落とし穴付近に、ゾンビが迷い込んできたのだ。

しかも、今度は一体だけじゃなかった。

二体も。

「…!皆、逃げろ!」

気づいたのは、空を飛んでいた李優さんだった。

今度は、私も身体を竦ませることはなかった。

「のぞみ!逃げるよ」

「う、うん」

お兄ちゃんが駆け寄ってきて、私はお兄ちゃんと手を繋いで、急いで落とし穴から距離を離した。

他の皆も、同じようにゾンビから逃げていたが…。

相変わらず、萌音さんだけは逃げなかった。

ゾンビが一体だろうと二体だろうと、彼女には関係なかった。

シャベルをフルスイングして、同時に頭部を吹き飛ばした。

グチャッ、と音がして、潰れた頭部から腐った匂いが漂っていた。

私はその時点で、顔面蒼白だった。

ゾンビが殺される、凄惨な光景を目撃したからではない。

安全だと思われていたこの場所に、ゾンビが二体も…。

いや、2時間前の一体と合わせると、合計三体ものゾンビが現れたことに戦慄していたのだ。

嘘でしょう…?

この場所は安全だって…そう思っていたからこそ、私達はこの場所に落とし穴を掘ろうと…。

「…何だか、雲行きが怪しくなってきたな」

ふぁにさんが、そう呟いた。

誰もが、胸中に広がる不安を隠せずにいた。

「…どういうことだ?ゾンビ共は…俺達がここにいることを嗅ぎ付けたのか?」

響也さんが聞いた。

「この短時間に三体も…だからな。偶然とは言えないかもしれない」

「別に関係ないよ。三体くらいなら、寄ってきたそばから倒せば良い」

萌音さんだけは、勇ましい返答だったけど。

そういう問題ではなくなっているかもしれない。

「こう度々邪魔されたんじゃ、落とし穴の建設どころじゃないぞ」

「なら、もう落とし穴は諦めるのか?」

そんな。

折角、皆で毎日作業して。

大変な作業だったけど、ようやく完成の目処が立ち始めているところだったのに…。

「…分からない。もう数日、様子を見よう。安全第一でな」

李優さんがそう言って、皆も頷いた。

湧き上がる不安を、心の中に抑えて。