神に選ばれなかった者達 前編

と、言うのも。

翌日から、落とし穴の周辺まで、ゾンビが彷徨くようになったのだ。 




最初に気づいたのは、ふぁにさんだった。

「…!皆、逃げろ!」

シャベルを持って作業していたふぁにさんが、突然鋭い声をあげた。

いつの間にか、ゾンビが近くまでやって来ていることに気づいて。

私は、思わず身体が固まってしまった。

「のぞみ!」

そんな私を庇うように、お兄ちゃんが駆け寄ってきて、私の手を取って走り出した。

お兄ちゃんに連れられて、私も一緒に走った。

響也さんもふぁにさんも、すぐに落とし穴から這い出て、近づいてきたゾンビと距離を取った。

李優さんも、その場に飛んで空中に逃げたが。

萌音さんだけが、驚くことも狼狽えることもなかった。

萌音さんは恐れることなく、むしろゾンビに向かっていった。

そして、手に持っていたシャベルで、思いっきりゾンビの頭を殴りつけた。

べシャッ、という音がした。

シャベルで殴られたゾンビは、頭を潰されてその場に倒れた。

「…」

…しばらく、死んだような静けさが広がった。

…まさか、この場所にゾンビが現れるなんて。

この夢を見るようになって、かなりの時間が経つが。

今私達がいるゴミ捨て場は、安全な場所だと思っていた。

たった今、こうしてこの場所に現れたゾンビを見るまでは。

「…のぞみ、大丈夫か?怪我はないか」

私を庇っていたお兄ちゃんが、心配そうに私の顔を覗き込んだ。

「う、うん…。平気…」

すぐにお兄ちゃんが助けに来てくれたから。

他の皆も、萌音さんがすぐに倒してくれたお陰で、死ぬどころか怪我一つしていなかった。

ただ、この出来事のせいで、私達の間に走った動揺は大きかった。

「…どういうことだよ?この辺は安全なんじゃなかったのか」

「…そのはずだったんだが…」

ふぁにさんと、響也さんが言った。

「絶対に安全、って保証されてる訳じゃないからな…。多分このゾンビだけ、偶然、外に出てきてしまったんだろう」

空中に逃げていた李優さんは、そう言いながら、ふわりと地面に降り立った。

そっか…。校舎内にはたくさんのゾンビがうろうろしてるんだから…。

偶然…ってことも有り得るよね。

…偶然…なんだよね?

「…」

私達の間に、不安が広がったが。

「…作業、続けよう。皆くれぐれも気をつけてな」

立ち止まっていても仕方がない。

李優さんは、皆に作業に戻るよう促し。

自分も、率先して作業を始めた。

李優さんのそんな姿を見て、程なく他の皆も、作業に戻った。