神に選ばれなかった者達 前編

翌日の夜も、同じように私は土を運び続けた。

数時間ほどは、何事もなく、順調に進んでいた。

問題が起きたのは、何度目かの往復の際。

昨日と同じように、私は渡り廊下近くの空きスペースまで、重いバケツを二つ持って、土を運んでいた。

早くも小さな山になり始めたそこに、まず一つ目のバケツを逆さまにした。

ドサドサ、と音がしてバケツの中身を捨てた。

「ふぅ…」

さて、もう一個…と、もう一つのバケツを持ち上げた、その時。

渡り廊下の向こうの窓に、ゾンビの姿が映ったのが見えた。

「…!」

窓越しとはいえ、突然現れたゾンビの姿に、私は酷く驚いた。

しかも、悪いことに。

驚いた拍子に、私は重いバケツをその場に取り落としてしまった。

トタンバケツが落っこちて、ガランガラン、と大きな音がした。

その音に、窓の向こうにいたゾンビが反応した。

窓越しに、振り向いたゾンビと目が合った。

…しまった。

こうなったら、背に腹は代えられない。

一歩、二歩と後退りをし。

私はバケツを拾うことを諦め、一目散にその場を駆けて逃げた。

ゾンビから身を隠す為に、近くにあった用具入れの影に身を潜める。

そして、どうかゾンビが追いかけてこないことを祈った。

お兄ちゃん達のところには戻れない。

もしゾンビが追ってきたら、お兄ちゃん達まで巻き込んでしまう。

そのまま私は、しゃがみ込んで身を小さくして隠れていた。

…それから、どれだけ時間が過ぎただろう。

ほんの数分ほどの出来事だったはずだが、私には、まるで永遠のように感じられた。

…幸い、ゾンビは追ってこないようで。

どれだけ耳を澄ませても、ゾンビの足音は聞こえなかった。

私は、そっと用具入れの影から頭を覗かせた。

遠く見える小さな土の山の近くに、ゾンビが彷徨いているのが見えた。

私がひっくり返してしまったバケツの近くを、うろうろと探すように。

しかも、そのゾンビは一体だけではなかった。

仲間を呼び寄せたとでも言うのか。

それとも、バケツをひっくり返した時の、あの音に反応したのか?

二体、三体とゾンビ達が土の山に群がっている様を、私は遠くから戦々恐々と眺めていた。

これ以上、ゾンビ達の気を引く訳にはいかない。

見つかる前に、私は急いで落とし穴の方に帰った。