神に選ばれなかった者達 前編

「…!」

校舎の方から、ベタッ、ベタッ、という特徴的な足音が聞こえ。

私は、反射的に身を竦ませた。

まさか。あのゾンビが。

私は急いで、近くにあった桜の木の木陰に身を潜めた。

ゾンビが、渡り廊下付近までやって来ていた。

幸い、ゾンビは隠れている私に気づくことはなく。

そのまましばらくぼーっと突っ立って、それからまたベタッ、ベタッと足音を立てて去っていった。

「…ふー…」

思わず、大きな溜め息をついた。

良かった。気づかれなくて…。

まさか、渡り廊下の近くまで出てくるなんて…。

これまではずっと、校舎の中から出てこなかったから…全然警戒していなかった。

偶然とはいえ、気をつけなければ。

…おっと、こうしてはいられない。

急いで落とし穴まで戻って、次のバケツを受け取らなきゃ。

きっと、李優さんが待っててくれるはずだ。

私は急いで走って、落とし穴まで戻った。

その後も私は、渡り廊下近くのそのスペースに、土を捨て続けた。

しかしその夜は、再びゾンビが姿を現すことはなかった。

だから、危うくゾンビに遭遇しかけたことは、誰にも言わなかった。
 
言ったら、またお兄ちゃんが過保護に心配するだろうし。

あくまで、偶然姿を見かけただけだと思っていた。

ゾンビが校舎から出ることはないのだと。

それが大きな間違いだということに、私は後々気付かされることになる。