「前より遥かに下がってるじゃない」
「そ、それは…。…今回の試験は、特別難しかったからだよ」
…聞いたところ。
どうやら、試験の点数が下がっていることについて、小言を言われているようだ。
「もうすぐ受験だっていうのに、部活ばっかりやってるから…」
「別に良いじゃん。部活は部活だろ?」
必死に言い返す眞沙である。
…正直、羨ましい。
試験の点数のことで親に怒られて、それに対して口を尖らせる、なんて。
俺には、絶対に出来ないことだったから。
…しかし、段々と話の矛先が怪しくなってきた。
「しょうがないだろ。今回は、響也兄ちゃんに試験勉強、付き合ってもらえなかったから」
眞沙が、俺の名前を出したことによって。
まさか、俺がこっそり立ち聞きしているなんて思ってもいないのだろう。
「そうなの?」
「そうだよ。なんか体調が悪いって言って…」
眞沙にも悪気はないのだろう。
試験の点数が悪かったことについて、何とか言い訳を作ろうとして。
悪気なく、俺の名前を出しただけだ。
それは分かっている。
分かっているけど…。
「あぁ、そういえば…。最近、学校にも行ってないみたいだったわね」
「今日は久し振りに行ってたみたいだけどね」
「まったく…何を考えてるんだか。これだから、あの姉さんの子を引き取るなんて嫌だったのよ」
叔母は、心底うんざりしたように言った。
叔母が日頃から俺のことをどう思っているのかは、理解しているつもりだった。
でも、実際にそうぼやいているのを聞くと、やはり気分が悪かった。
「それでも、子供達の家庭教師をしてくれるならと思って引き取ったのよ。それなのに、その役目さえ果たさないなら、何の役にも立たないわ」
「母さん…そんな…」
「だってそうでしょ?さっさと出て行くなり、姉さんのところに帰ってくれれば良いのに」
叔母は溜め息混じりにそう言って、そのままキッチンの方に向かっていく足音が聞こえてきた。
…俺はリビングには入らず、そのまま、くるりと踵を返した。
眞沙にあげようと思っていた試験用紙を、無意識に強く握り締めてしまったらしく。
気がつくと、用紙がくちゃくちゃになっていた。
…これじゃ、もう渡せないな。
叔母の言葉は辛辣だが、でも無理もないことだ。
叔母と甥とはいえ、結局は他人なのだから。
帰れるものなら、帰りたい。
でも、もう無理なのだ。
あの家に、俺の居場所は何処にもない。
…いや、最初からそんなものはなかったんだ。
俺だって、自分の役目くらい分かっている。
叔母が家庭教師代わりに、この家に引き取ってくれたことも。
だけど…駄目だったのだ。悪夢が…あまりにも、辛くて。
そしてこの苦しみは、これからも永遠に続いていくのだ。
未来永劫。多分、俺が死ぬまで。
「そ、それは…。…今回の試験は、特別難しかったからだよ」
…聞いたところ。
どうやら、試験の点数が下がっていることについて、小言を言われているようだ。
「もうすぐ受験だっていうのに、部活ばっかりやってるから…」
「別に良いじゃん。部活は部活だろ?」
必死に言い返す眞沙である。
…正直、羨ましい。
試験の点数のことで親に怒られて、それに対して口を尖らせる、なんて。
俺には、絶対に出来ないことだったから。
…しかし、段々と話の矛先が怪しくなってきた。
「しょうがないだろ。今回は、響也兄ちゃんに試験勉強、付き合ってもらえなかったから」
眞沙が、俺の名前を出したことによって。
まさか、俺がこっそり立ち聞きしているなんて思ってもいないのだろう。
「そうなの?」
「そうだよ。なんか体調が悪いって言って…」
眞沙にも悪気はないのだろう。
試験の点数が悪かったことについて、何とか言い訳を作ろうとして。
悪気なく、俺の名前を出しただけだ。
それは分かっている。
分かっているけど…。
「あぁ、そういえば…。最近、学校にも行ってないみたいだったわね」
「今日は久し振りに行ってたみたいだけどね」
「まったく…何を考えてるんだか。これだから、あの姉さんの子を引き取るなんて嫌だったのよ」
叔母は、心底うんざりしたように言った。
叔母が日頃から俺のことをどう思っているのかは、理解しているつもりだった。
でも、実際にそうぼやいているのを聞くと、やはり気分が悪かった。
「それでも、子供達の家庭教師をしてくれるならと思って引き取ったのよ。それなのに、その役目さえ果たさないなら、何の役にも立たないわ」
「母さん…そんな…」
「だってそうでしょ?さっさと出て行くなり、姉さんのところに帰ってくれれば良いのに」
叔母は溜め息混じりにそう言って、そのままキッチンの方に向かっていく足音が聞こえてきた。
…俺はリビングには入らず、そのまま、くるりと踵を返した。
眞沙にあげようと思っていた試験用紙を、無意識に強く握り締めてしまったらしく。
気がつくと、用紙がくちゃくちゃになっていた。
…これじゃ、もう渡せないな。
叔母の言葉は辛辣だが、でも無理もないことだ。
叔母と甥とはいえ、結局は他人なのだから。
帰れるものなら、帰りたい。
でも、もう無理なのだ。
あの家に、俺の居場所は何処にもない。
…いや、最初からそんなものはなかったんだ。
俺だって、自分の役目くらい分かっている。
叔母が家庭教師代わりに、この家に引き取ってくれたことも。
だけど…駄目だったのだ。悪夢が…あまりにも、辛くて。
そしてこの苦しみは、これからも永遠に続いていくのだ。
未来永劫。多分、俺が死ぬまで。


