神に選ばれなかった者達 前編

久し振りに登校してきたことに関して一悶着あったのはその程度で。

あとは、俺が以前から知る学校生活と、何も変わらなかった。

誰も、俺が休んでいた本当の理由なんて聞こうとしない。

聞いて欲しくないから、それはむしろ助かったのだが。

俺が死ぬほど苦しんでいたあの日々の間も、ここにいる人達にとっては、いつもと変わらない日常だったのだろう。

何事があろうとも、地球は変わらず回っている。ということなんだろうな。

仕方のないことだ。

俺だって、あんな悪夢を見なければ。

生贄にならなければ、多分一生気づかなかった。

この世にあんな悪夢が存在していることに。

無事に授業が終わった、その帰り際。

真っ直ぐには帰らず、俺は校舎裏のゴミステーションに向かった。

別に、何か用事があった訳ではない。

ただ、この目で見たかっただけだ。

夢の中じゃなくて、現実で。

そこは、夢の中の景色とまったく変わらなかった。

ただの、何処の学校にでもある、ゴミ捨て場。

昨晩はこの場所で、快適な別荘のように過ごしていたのかと思うと…とても信じられない気分だが。

確かにあれは、事実だったのだ。

…その時。

学生鞄に入れっぱなしだったスマホに、通知音が鳴った。

おもむろにスマホを取り出して、画面を見ると。

『処刑場』が、勝手に起動していた。

思えば、この謎のアプリのことも、疑問が尽きないが。

あの終わりない悪夢に比べれば、何でも些末なことだな。

『処刑場』には、メッセージが発信されていた。

『天使ちゃん∶響也。

天使ちゃん∶どうしてる?元気か』

どうやら、天使ちゃん…もとい。

佐乱李優が、俺を心配してメッセージを送ってくれたらしい。

更に。

『シスコン兄∶まだ受け入れるには時間がかかるだろう。

シスコン兄∶あまり気落ちするなよ

シスコン兄の妹∶それまでは、私達が頑張って戦いますから』

シスコン兄妹も、同じくメッセージを送ってくれた。

…優しい人達だな。

同じ悪夢を共有する者同士、仲間意識があるのかもしれない。

クラスメイトとは大違いだな。

『きょうや∶大丈夫だ。

きょうや∶心配ない』

俺は、簡潔にそう返事をしておいた。

また今夜も、彼らと会うことになるのだろうか。

それはつまり、あのゾンビ達を倒すことを決意する、ということだ。

一度やったのだから、もう躊躇う必要などない。

俺はくるりと踵を返して、学校を出た。