眞沙と別れ、駅に着いた俺は、電車に乗って高校まで向かった。
玄関を通って、下駄箱まで辿り着いた時。
同じく登校したばかりの他学年の女子生徒達が、お互いのスマホの画面を見せ合いながら、楽しそうにおしゃべりしているのを見かけた。
どうやら、写真を見せ合っているようだが。
その姿を見てふと、俺は今日、起きてから一度もスマートフォンを触っていないことに気づいた。
学生鞄のポケットに入れたままだ。
…まぁ、俺に連絡をする人間は、まず滅多に存在していない故に。
一日二日、放置していても何の問題もないが。
俺は自分のスマホを取り出し、画面を覗き込んだ。
案の定、何の連絡も入っていない…が。
「…?」
アプリ一覧の隅っこに、まったく見覚えのないアプリのアイコンが増えていることに気づいた。
…何だろう。これは。
アプリの名前は、『処刑場』。
…何やら、物騒な名前のアプリケーションである。
このような謎のアプリをインストールした覚えはないのだが。
迷惑アプリという奴だろうか。
いずれにせよ、身に覚えのないアプリを開くつもりはなかった。
下手にアプリを開くと、不正使用料を請求されかねない。
俺はスマホをタップして、その『処刑場』というアプリをアンインストールした。
無事にアプリを消すことが出来て、ホッとして教室に向かった…の、だが。
「…」
教室に入るなり、俺はその場に立ち尽くしてしまった。
驚いたことに、昨日の放課後まで確かにあったはずの、自分の机と椅子が消えていた。
整然と並ぶ机の列に、ぽっかりと穴が開いているかのように。
俺の机と椅子だけが、教室から消えてなくなっていたのである。
…これじゃ、俺は床に座って授業を受けるしかないな。
それは別に構わないのだが、机の引き出しに入れていたはずの、テキストやノートまで一緒に消えている。
これは普通に困る。
何処に行ったのだろうか。机と椅子はともかく、テキストとノートは返してもらいたい。
普通、登校してきた時に自分の机がなくなっていたら、一体どんな怪奇現象かと怯えることだろう。
だが、俺はまったく恐れなかった。怯えなかった。
何故なら、これくらいの「怪奇現象」は、俺にとっては日常茶飯時だからである。
すると、その時。
「ちょっと。教室の真ん前に突っ立ってないでよ。邪魔なんだけど」
後ろから、刺々しい女子生徒の声が聞こえてきた。
「え?あぁ…」
振り向いて、俺はその場を退くように、何歩か横に避けた。
するとそこには、クラスメイトの女子生徒が、ニヤニヤしながら立っていた。
鏡を見てみると良い。悪党を体現したような表情だ。
彼女の名前は、雨野(あまの)リリカという。
そして、彼女こそが…恐らくは…。
「どうしたの?突っ立ってないで、自分の席に座りなよ」
白々しく、雨野リリカは俺にそう促した。
…やはり、間違いない。
彼女こそ、俺の机と椅子の窃盗犯である。
玄関を通って、下駄箱まで辿り着いた時。
同じく登校したばかりの他学年の女子生徒達が、お互いのスマホの画面を見せ合いながら、楽しそうにおしゃべりしているのを見かけた。
どうやら、写真を見せ合っているようだが。
その姿を見てふと、俺は今日、起きてから一度もスマートフォンを触っていないことに気づいた。
学生鞄のポケットに入れたままだ。
…まぁ、俺に連絡をする人間は、まず滅多に存在していない故に。
一日二日、放置していても何の問題もないが。
俺は自分のスマホを取り出し、画面を覗き込んだ。
案の定、何の連絡も入っていない…が。
「…?」
アプリ一覧の隅っこに、まったく見覚えのないアプリのアイコンが増えていることに気づいた。
…何だろう。これは。
アプリの名前は、『処刑場』。
…何やら、物騒な名前のアプリケーションである。
このような謎のアプリをインストールした覚えはないのだが。
迷惑アプリという奴だろうか。
いずれにせよ、身に覚えのないアプリを開くつもりはなかった。
下手にアプリを開くと、不正使用料を請求されかねない。
俺はスマホをタップして、その『処刑場』というアプリをアンインストールした。
無事にアプリを消すことが出来て、ホッとして教室に向かった…の、だが。
「…」
教室に入るなり、俺はその場に立ち尽くしてしまった。
驚いたことに、昨日の放課後まで確かにあったはずの、自分の机と椅子が消えていた。
整然と並ぶ机の列に、ぽっかりと穴が開いているかのように。
俺の机と椅子だけが、教室から消えてなくなっていたのである。
…これじゃ、俺は床に座って授業を受けるしかないな。
それは別に構わないのだが、机の引き出しに入れていたはずの、テキストやノートまで一緒に消えている。
これは普通に困る。
何処に行ったのだろうか。机と椅子はともかく、テキストとノートは返してもらいたい。
普通、登校してきた時に自分の机がなくなっていたら、一体どんな怪奇現象かと怯えることだろう。
だが、俺はまったく恐れなかった。怯えなかった。
何故なら、これくらいの「怪奇現象」は、俺にとっては日常茶飯時だからである。
すると、その時。
「ちょっと。教室の真ん前に突っ立ってないでよ。邪魔なんだけど」
後ろから、刺々しい女子生徒の声が聞こえてきた。
「え?あぁ…」
振り向いて、俺はその場を退くように、何歩か横に避けた。
するとそこには、クラスメイトの女子生徒が、ニヤニヤしながら立っていた。
鏡を見てみると良い。悪党を体現したような表情だ。
彼女の名前は、雨野(あまの)リリカという。
そして、彼女こそが…恐らくは…。
「どうしたの?突っ立ってないで、自分の席に座りなよ」
白々しく、雨野リリカは俺にそう促した。
…やはり、間違いない。
彼女こそ、俺の机と椅子の窃盗犯である。


