神に選ばれなかった者達 前編

予想していたことだから、特に驚きはしない。

学校に来たら自分の席がなくなっているのは、初めてじゃないしな。

しかも、今回はゴミステーションに取りに行く必要はないのだ。

俺は教室を出て、3階の隅にある空き教室から、机と椅子を一脚ずつ持ってきて。

それを教室の後ろ、一番後ろの隅っこに置いて、そこを自分の席とした。

そして鞄の中からノートとテキストを取り出し、久し振りに授業を受けた。

半月近く休んでいたから、とっくに授業の内容が分からなくなっているかもしれない、と思ったが。

不思議と、ついていくのにそんなに苦労はしなかった。

これなら、家で少し自分で復習すれば、問題なくついていけそうだ。

むしろ問題だったのは、休み時間になってから。



 

「不登校君が、今更何しに来たの?」

待ってましたとばかりに、雨野リリカと、その取り巻き達が嫌味を言いにやって来た。

「…」

いつもなら煩わしいか、あるいは何も感じないところだが。

俺はその日、じっと雨野リリカの顔を見つめてしまった。

「…は?何なの?こっち見ないでよ。気持ち悪い」

「あぁ…済まない」

生きてたんだ、と思って。ついな。

「あーあ。折角あんたのキモい顔見なくて済むと思ったんだけどなー」

「二度と学校、来なくて良かったんだけど?」

「今更戻ってくるとか。キモッ」

言いたい放題だな。

別に良い。好きなことを、好きなだけ言ってくれ。

殺される訳じゃないなら、何でも良い。

「誰もあんたが戻ってくることなんて望んでないの、分かんないワケ?」

「…」

「その澄ました顔、ほんとウザい。さっさと死んでくれれば良いのに」

…それは悪かったな。

夢の中で良ければ、もう百回は死んだぞ。

それにしても、「死んでくれれば良いのに」か…。

…もし雨野リリカ達も、俺と同じ悪夢を見ていたら。

一度でも、死の痛みを経験していたら。

人に向かって「死ねば良い」なんて、絶対に言えないだろうな。

死という言葉の意味を、その重みを知らない。

あれは、実際に体験した者でなければ分からない。

だけど、そんな無知な彼女のことが、俺は無性に羨ましかった。