神に選ばれなかった者達 前編

翌朝。




「…」

ようやく、長い夜が明けた。

これまではずっと、起きる直前まで、夢の中で死の痛みを味わっていた。

しかし、今朝は違っていた。

つい先程まで、ゴミステーションで『処刑場』の仲間と喋っていただけで。

昨日の夜は、結局最初の一回しか死んでいない。

一回しか死なずに済んだなんて、なんて幸運なのだろう。

…当たり前のことのはずなのに、今では自然と、そう思ってしまう。

俺は、ゆっくりとベッドに起き上がった。

これまでのような身体の重さが、嘘みたいに消えていた。

…どうやら、彼らの言っていたことは本当だったようだ。

ゾンビを一体殺したことによって、視界の端にノイズが走ることも、黒いモヤもなくなっていた。

ようやく、視界も気分も晴れたような気がした。

…。

俺は、そのままぼんやりと、部屋の壁時計を眺めていた。

その時、誰かが玄関から出ていくような音がした。

眞沙か、その妹の眞未だろうか。

多分、これから学校に行くんだろう。

…あ、そうだ。学校…。

他人事のように言っているが、そういえば俺も学生なんだった。
 
もう当分登校してないから、忘れるところだった。

試しに俺は、窓のカーテンを開けて、外を眺めた。

やはり、視界にノイズが走ることはなかった。

…これなら、今日は久し振りに、学校にも行けるかもしれない。

昨日の夜も学校にいたのに、起きて、現実でも学校に行くとは。

でも現実の学校の方が、ずっと気が楽だ。

だってゾンビに襲われる心配も、ベランダから転落する心配もないのだ。

最高の天国、極楽じゃないか。

ベッドから降りた俺は、久し振りに制服を手に取った。