神に選ばれなかった者達 前編

「俺達がここで…こうして悪夢を見るようになったのは、全部…俺達が生贄に選ばれたせいだって言うのか…?」

「…そう考えるべきだろうな。…確かなことは言えないけど」

…そんな…。

「どうして…?どうして俺達が…」

「それは分からない」

「…何の為に、こんなことを?」

「それも分からない」

むしろ、なら何なら分かるのかと聞きたくなってくる。

こうして、無事に彼らのもとに辿り着けば、俺は自分の知りたかったことを全部知ることが出来ると。

無意識のうちに、そう思い込んでしまっていた。

何も分からないのは彼らのせいじゃないと分かっていても、内心湧き上がる苛立ちを抑えきれなかった。

俺はついに、一番聞きたかったことを彼らに尋ねた。

「これは、いつまで続くんだ?どうやったらこの悪夢は終わる?」

それさえ分かれば、この際理由なんてどうでも良い。

この悪夢が、いつになったら終わるのか…。

…しかし。

「終わらないよ」

久留衣萌音が、そう答えた。

…「分からない」とは言われなかった。

ちゃんと、明白な答えを与えられた。

でもその答えは、俺が求めていたものではなかった。

…終わらない。悪夢は…決して。

「萌音はずっと昔に生贄になって、もう何年も経つけど、ずっと終わらない。多分永遠に」

「…絶対、なのか?どうやっても、絶対に逃れられないのか?」

「うん。少なくとも萌音はそう思ってる」

きっぱりと。あまりに非情に。

…どうして、そんな平然とした顔で、そんなことが言えるんだ。

永遠に続くことになる苦しみを、どうしてそんな平然と受け入れられるんだ?

「…ごめん、響也。気を悪くしないでくれ。萌音にも悪気はないんだ」

俺が絶望していることを察したのだろう。

佐乱李優が、慰めるようにそう言った。

だが、そんな言葉は慰めにはならなかった。

受け止められない現実を、受け止めるしかないという通告なんて。

「終わりがあるのかどうか、本当は分からないんだ。ただ、いつかは終わるって期待してたら、その期待が裏切られた時…多分、凄く辛くなるから」

「…」

「期待を持たせたくないから、終わらないと思うようにしてる。当たり前のこととして受け入れて、何が起きても何があっても、傷つかずにいられるように」

「…そうか」

そういう風に…俺には、まだ受け入れられない。

だけど、他の生贄達の表情を見れば。

彼らもまた、苦しい現実を受け入れられるようになる為に、酷く苦難したのであろうことは明らかだった。

…俺にも、同じように受け入れろ、と。

果たしてそんなことが、俺にも出来るのだろうか。