神に選ばれなかった者達 前編

「改めて自己紹介、しておいた方が良いな」

と、天使ちゃんという青年が言った。

「俺は、『天使ちゃん』こと佐乱李優(さみだれ りゆう)。高2だ」

真っ白な翼を生やした青年は、自らをそう名乗った。

同級生かと思っていたら、一つ年上だったのか。

「僕は空音いそら(そらね)。19歳。『処刑場』ではシスコン兄、って名乗ってる。で、こっちは妹ののぞみ。15歳で中3だ」

「宜しくお願いします」

ハンドルネーム「シスコン兄」と、「シスコン兄の妹」。

改め、空音いそらと、空音のぞみがそれぞれ挨拶をした。

19歳と、15歳…。

いそらという青年は俺よりも歳上だが、妹ののぞみは、まだ15歳…。

眞沙よりも年下じゃないか。

そんな幼い少女が、こんな恐ろしい夢の中に巻き込まれて…。

…いや、待て。

女性なら、他にもいるのでは…?

「他の…二人は?」

「ん?」

「確か…『もちもちもね』と、『ポンコツスナイパー』っていう二人が…」

『処刑場』には、まだ二人いたはずだ。

そのうち「もちもちもね」さんの方は、文章を見たところ、女性のようだったが…。

「あぁ…あの二人なら、偵察に出てるよ」

と、佐乱李優が答えた。

偵察…?

「そろそろ戻る頃だと思うが…。…お。噂をすれば」

佐乱李優が、俺の背後を指差した。

すると、そこには。

「…あれ?知らない人がいる」

「…どうやらゾンビって訳じゃなさそうだな」

現れた二人を見て、俺は思わず息が止まりそうになった。

片方は、俺や佐乱李優とさして歳の変わらない青年だ。

弓道で使うような、弓を持っている。

驚いたのはその弓使いではなく、もう一人の方。

恐らく「もちもちもね」というハンドルネームの女性だ。

その女性の身体には、べっとりと、全身にゾンビの粘液が付着していた。

さながら、返り血である。

返り血ならぬ…返り体液、と言った方が正しいかもしれないが…。

それなのにその女性は、苦痛に顔を歪ませるようなこともなく。

何事もなかったように、けろっとしていた。

その片手には、べったりと粘液のついた包丁を握り締めていた。

あれが…彼女の武器…?

「だ…大丈夫なのか?」

思わず、そう尋ねてしまっていた。

「ほぇ?何が?」

「何がって…。…酷い有り様だから」

「うん。平気だよ」

…平気なのか。本当に? 

…まぁ、これだけの人数が、同じ悪夢を見ているというだけで。

全然、まったく、何も大丈夫ではないけどな。