神に選ばれなかった者達 前編

ようやく、ゴミステーションに到着すると。

「っ、誰?」

やって来た俺と天使ちゃんを見て、鋭い声をあげる者がいた。

大きなポリバケツの影に、人影が見えた。

現れたのは、少女だった。

眼鏡をかけ、長い三つ編みをした少女。

それを見て、俺は酷く驚いた。

こんなところに…女性がいるなんて。

しかも、まだ幼さを残したその顔は、恐らく中学生かそこらだろう。

こんな幼い少女まで…悪夢の中に巻き込まれているというのか。

「のぞみ、大丈夫だ。生身の人間だよ」

天使ちゃんが、その少女に言った。

のぞみ…。

のぞみっていうのが、この少女の名前なのか?

…更に。

そののぞみという少女を守るように、背の高い青年が現れた。

「そいつ…もしかして、『処刑場』に来た…きょうやって男か?」

青年は、疑うような目でこちらを見ていた。

その手には、あろうことか、ゴツい鉄パイプが握られていた。

な、何だ。あの鉄パイプ…。

どうしてあんなものを…と、思ったが。

鉄パイプの先に、ゾンビのものらしきピンク色の粘液が付着していた。

…もしかして、あの鉄パイプが青年の武器なのだろうか。

「そ、そうだが…。…その鉄パイプは…?」

「ん?あぁ…僕の武器だよ」

と、青年が答えた。

やっぱり…そうなのか。

「大丈夫だ。ゾンビと、それからのぞみにちょっかいかける奴以外は、殴るつもりはないから。安心してくれ」

「…えっ…」

…それ、うっかり俺も殴られないか?

別に、のぞみという少女にちょっかいをかける気はないが…。

「良いか、君が新入りなら、先に言っておく。夢の中だからって、僕の可愛い可愛い妹に手出ししようものなら、僕は黙ってない」

「は、はぁ…」

「もしのぞみを傷つけようものなら、無条件でぶん殴るから、宜しく」

ポン、と俺の肩に手を置いて、青年はそう言った。

「○○しないとぶん殴る」って、冗談で言う人は見たことがあるが。

粘液のついた鉄パイプを持って言われると、非常に説得力があると言うか。

くれぐれも気をつけよう。って思うよな。

「もう、お兄ちゃん…!新しく来たばかりの人に、どうしてそんなこと言うのよ」

のぞみと呼ばれた三つ編みの少女が、いきり立ってそう言った。

「ごめんなさい、きょうやさん…で、良いんですよね?」

「あ、あぁ…」

「お兄ちゃんの言うことは気にしないで。気を悪くしないでくださいね」

…お兄ちゃん…か。

成程。それじゃ、もしかしてこの二人が…。

「間違ってたら謝るが…。『処刑場』にいた、シスコン兄とその妹っていうのは…」

「あ、うん。シスコン兄、っていうのがこっちのお兄ちゃん。その妹が私です」

のぞみという少女が、そう答えた。

やっぱり、そうだったのか…。