神に選ばれなかった者達 前編

一体どうしたら良いんだ。

やっと…ようやく…「仲間」に出会えると思ったのに。

この不可思議な夢について、手がかりを得られるチャンスなのに。

どうやって…夢の中で彼らのもとに辿り着けば良い?

絶望感に苛まれた、その時だった。

『もちもちもね∶戦うしかないよ』

「もちもちもね」さんが、そう口にした。

…え?

『もちもちもね∶もね達は助けに行ってあげられない。だったら自分で何とかするしかないでしょ』

…それは、そうだけど。

自分で何とか出来るならとっくにしてる、というのが俺の気持ちだった。

これまで10日もの間、俺だってただ手をこまねいていた訳じゃない。

何とか逃げる方法を模索して…それでもどうしようもなくて…。

しかし、「もちもちもね」さんが言いたいのは、そういうことではなかった。

『もちもちもね∶君の武器は何?』

…武器?

『きょうや∶武器って…どういうことだ?

もちもちもね∶君も夢の中にいるなら、何か武器を持ってるはずでしょ。それを使うんだよ』

俺は、必死に考えた。

武器…武器って…。

その時、はたと気づいた。

そういえば俺は夢の中でいつも、片手に錐を持っていた。

こんなところに工具なんて持ってきても仕方ないのに、何で錐なんか持ってるのか分からなかったが。

…もしかして、あれが武器?

信じられない。

武器って言ったら…もっと、剣とか拳銃とか、爆弾とか…。

錐一本が武器だなんて、そんな貧弱な装備があるか?

『もちもちもね∶君が持ってるその武器が、夢の中を生き抜く唯一の可能性なんだよ。武器を使わないと』

そんな…。

俺の武器がどれだけ貧弱か知らないから、そんなことが言えるのだ。

『もちもちもね∶自力で、ゴミ捨て場まで来て。もね達、そこで待ってるから

もちもちもね∶それじゃ、そろそろ夜だから。落ちるね』

え、ちょっ…。そんな言いたいことだけ言って。

まだまだ、聞きたいことはたくさんあったのに。

掲示板には、『もちもちもねさんが退室しました』の文字が。

…本当に落ちたのか…。

『天使ちゃん∶…言い方は厳しいが、もねの言う通りだ』

まだ掲示板に残っていた天使ちゃんが、そう言った。

『天使ちゃん∶ゾンビに襲われてるのは俺達も同じだ。正直、あまり人を助ける余裕はない。』

当然のことだ。

俺だって、夢の中にいる時は、自分のことで精一杯で。

周囲を見る余裕さえなかったのだから。

もう少し注意深く見ていたら、彼らがいることだって気づいたかもしれないのに。

『天使ちゃん∶難しいかもしれないが、少なくとも1階に到達するまでは、自分で乗り切る方法を考えてくれないか

きょうや∶分かった』

そう答えるしかなかった。

そして俺もまた…覚悟を決めるしかなかったのだ。

ここにいる、処刑場の仲間達と同じように。