神に選ばれなかった者達 前編

俺が困惑していることを、知ってか知らずか。

天使ちゃんは、話をつづけた。

『天使ちゃん∶あんたも夢の中で、同じ校舎の中にいるんだよな?

天使ちゃん∶この掲示板見てたなら、ゴミ捨て場が安全だってことは知ってるはずだ。

天使ちゃん∶今夜、何とかゴミ捨て場まで来られないか?』

…難しいことを言う。

『天使ちゃん∶場所、分かるか?校舎の裏にあるらしいんだが

きょうや∶ゴミステーションの場所は分かる。あの校舎は、俺が普段通ってる校舎だから』

まぁ、今は一週間以上登校してないが。

場所は分かるけど、でも、そこまで行くのは容易なことではない。

『きょうや∶でも、そこまで行くのは難しいかもしれない

ポンコツスナイパー∶あんたさん、一体何処にいるんだ?』

ハンドルネーム「ポンコツスナイパー」さんが、俺に質問を投げかけた。

すぐにピンと来た。

何処にいるんだ、っていう質問は、つまり。

夢の中に転送された時、何処にいるのかっていう意味だよな?

『きょうや∶3階の教室なんだ』

と、俺は答えた。

だから、俺がゴミステーションに辿り着くには。

3階から1階まで駆け下りて、それから校舎の外に出る扉を通って。

校舎の裏側に回って、それで初めてゴミステーションに辿り着くのだ。

その簡単な道のりが、俺にとっては物凄く長い。

フルマラソンを走れと言われた方が、まだ楽なような気がする。

ゾンビに襲われず、生きて、ゴミステーションまで辿り着けるとは思えない。

『きょうや∶それに、夢の中でいつも…夢が始まってすぐ、ゾンビに襲われて

天使ちゃん∶それでいつも死んでるのか?

きょうや∶あぁ

天使ちゃん∶助けに行ってやりたいところだが…。寄りにもよって3階か。俺ともねは1階なんだよな』

そうだったのか。

俺は自分のことで手一杯で、周囲に気を配る余裕なんてなかった。

でも、毎晩あの夢の中にいるのは、俺だけじゃないんだ。

俺が一度も辿り着けなかっただけで、1階に行けば。

この「天使ちゃん」という人や、「もちもちもね」という人にも出会えるのか。

『天使ちゃん∶他のメンバーは?誰か、3階に向かえそうなヤツは?

ポンコツスナイパー∶自分は無理だな。体育館だし』

「ポンコツスナイパー」さんの初期位置は、体育館であるらしい。

俺もそうだったら、どんなに話が早かったことだろう。

『シスコン兄∶僕と妹も1階だ。1階の職員室。だから、3階には行けそうにない

シスコン兄の妹∶ごめんなさい、きょうやさん』

ハンドルネーム「シスコン兄」さんと、「シスコン兄の妹」さんもまた、初期位置は1階。

それも、職員室であるらしい。

…とてもじゃないが、ゾンビの襲撃を掻い潜って、3階まで来られるとは思えない。