神に選ばれなかった者達 前編

俺は、堪らずスマホに齧りつくようにして。

見知らぬ、その掲示板に書き込みをした。

それは、俺が自ら『処刑場』に足を踏み入れた瞬間だった。

『きょうや∶教えてくれ。

きょうや∶ここにいる者達も、俺と同じ悪夢を見てるのか?』

夢中になって書き込みをしたあまり、自ら名乗ることも、挨拶をすることもしなかった。

『処刑場』の住人達も、さぞや驚いたに違いなかった。

その証拠に。

『天使ちゃん∶誰だ?

もちもちもね∶だれか名前、変えた?

シスコン兄∶変えてない

シスコン兄の妹∶私もです

ポンコツスナイパー∶見たことないIDだ。あんたさん、誰?』

俺の突然の乱入に、掲示板は騒然としていた。

え、えぇと。

『きょうや∶突然すまない。

きょうや∶今朝から、この掲示板を読ませてもらっている。

きょうや∶どうしても教えて欲しいことがあるんだ』

俺は、思いの丈を必死に綴った。

人生でこんなにも、急いでスマホの画面をタップしたことはない。

『天使ちゃん∶教えて欲しいことって?

きょうや∶ここにいるお前達も、毎晩悪夢を見てるのか?』

俺がそう尋ねると、チャットの勢いが突然、弱まった。

そのまま一分以上、時は止まったままだった。

次に発言したのは、リーダー格の天使ちゃんという人物だった。

『天使ちゃん∶あんたも夢を見てるのか』

…夢。

『きょうや∶あぁ。10日くらい前から、ゾンビに襲われる悪夢を見るようになった。

きょうや∶それ以来、毎日同じ夢を見続けてるんだ。その度に、何度も死んでは生き返りを繰り返している。

きょうや∶これはお前達と同じなのか?

きょうや∶お前達も、俺と同じ悪夢を見てるのか?

きょうや∶この夢は、一体何なんだ?』

立て続けに、ここぞとばかりに、俺は質問を連打した。

すると。

『天使ちゃん∶悪いが、俺達にも詳しいことは分からない。』

ハンドルネーム天使ちゃんから、冷静な返答が返ってきた。

…そうだ。当たり前だ。

医者でさえ分からないのに、彼らに分かるはずがない。

…しかし。

『天使ちゃん∶でも、あんたも同じ夢を見てるんだとしたら、あんたも生贄に選ばれたのかもな』

と、彼(彼女?)は言った。

…生贄?

突然、非常に物騒な単語が出てきた。

『きょうや∶生贄って、どういうことだ?

天使ちゃん∶ここで説明するより、夢の中で会って、直接話した方が良いと思う』

夢の中で会う?

そんなことが可能なのか。

聞いたことがないぞ。夢の中で待ち合わせなんて。

それはもう夢じゃなくて、異世界に転移してるようなものじゃないか。