神に選ばれなかった者達 前編

眞沙は中学校の、俺は高校の制服に、それぞれ袖を通し。

二人で、一緒に家を出発した。

自分の隣に誰かがいるという感覚が、何と無く不自然なような気がして、慣れない。

それでも、性格が朗らかな眞沙は、俺と違ってそんなことはまったく気にしていないようで。

「たまにはこういうのも良いよな」

と、明るく口にした。

「…何が?」

「こうやって、響也兄ちゃんと登校するの」

「…」

普段は、眞沙が家を出る時、俺はまだ夢の中だもんな。

「明日からもそうしたい…ところだけど、朝練がないのは今日だけだし…」

「そうか」

「響也兄ちゃんも、何か部活に入れば良いのに」

…何故そうなる?

「いや、俺は別に…」

「だって、運動神経良いじゃん?走るの速いし。サッカー部入ったら、きっとすぐにスタメンになれると思うけどな」

それは無理だよ。

残念ながら俺は、サッカーのルールさえ詳しく知らない。

サッカーなんて、体育の授業で少し触ったくらいだ。

ボールを相手のゴールに入れたら勝ち、ってことくらいしか。

ましてや。

「俺に球技は向いてないよ」

チームで行うスポーツは苦手だ。

チームメイトと、どんな風に接したら良いのか分からない。

「そう?何で?」

「上手くチームメイトとコミュニケーションが取れると思えない」

「大丈夫だよ。響也兄ちゃんって口下手だけど、根は親切で優しいから。皆すぐに分かってくれるよ」

そうか。それはありがとう。

誰もがお前みたいにコミュニケーション能力が高かったら、俺みたいな口下手でも、チームに溶け込めるのかもしれないが。

少なくとも、今の俺には無理そうだ。

「それに、球技が駄目なら…陸上部とか。どう?」

「陸上か…。どんなスポーツにせよ、高校生から始めるのは難易度が高いような気がするが…」

「大丈夫だって。何かを始めるのに、遅いなんてことはないよ」

お前はポジティブだな。

何でも後ろ向きに考えてしまう俺とは、まるで正反対だ。

俺みたいな人間は、部活動には向いてない。

「…やっぱり嫌?」

「俺には出来ないと思う」

一番身近にいる人達とさえ、上手くコミュニケーションを取れないのに。

出来そうもないことには、はじめから手を出さないに限る。