神に選ばれなかった者達 前編

「…」

…こんなの、初めて見た。

俺みたいな取り柄のないつまらない人間は、こんなインターネット上の出会いの場みたいなチャットアプリ、使ったことは一度もない。

何でこんなアプリが…。…勝手に俺のスマホに…?

…流行り(?)の、デート詐欺みたいなものだろうか。

喋って、意気投合して、仲良くなってきたと思ったら。

「ところで良い壺があるんだけど…」とか言って、ガラクタの壺を法外な価格で買わされたりするんだろうか。

俺は…そういうのは間に合ってるんだが。

しかし。

そこで繰り広げられていた会話は、そんな生易しいものではなかった。

『もちもちもね∶あと何匹いるのかな?あのゾンビ

ポンコツスナイパー∶50匹は倒したのに、まだなくならねぇ。めんどくさい

天使ちゃん∶倒せるのか?

ポンコツスナイパー∶倒せる。頭を撃った

天使ちゃん∶頭?心臓じゃなくて?

ポンコツスナイパー∶頭狙い撃ちでイケる

シスコン兄∶成程。方法が分からないから、突き落として倒してた。今度から頭を狙う

もちもちもね∶そうなんだ。動かなくなるまで突き刺してた

天使ちゃん∶それでも殺せてるんだから良いけど

シスコン兄の妹∶そろそろ寝ます。それじゃあまた、今夜

もちもちもね∶うん。また後でねー 

ポンコツスナイパー∶健闘を祈る

天使ちゃん∶お前もな』

ここまでで、会話は途切れている。

最新の会話の内容が、これだ。

会話の末尾に、発信した日付と時間が記載されている。

驚いたことに、最後の発信はおよそ半日前だった。

そしてそれ以上に驚いたのは、「ゾンビ」という言葉だった。

…嘘だろう?どういうことだ?

偶然?そんなことってあるのか?

このアプリは何なんだ。この会話の内容は?

一見すると、ただのゲームか何かの掲示板だが。

俺にとってそれは、無視することなど出来なかった。

その時に俺は、はたと気づいたのだ。

『処刑場』が勝手に、スマホにインストールされた日。

あの日は、俺が初めて悪夢を見た日だった。

もしかして、俺の悪夢とこの掲示板は、何か関係があるのだろうか?

普通に考えれば、そんなことあるはずない、ただの偶然だと思うはずだった。

だが今の俺は、現状を少しでも打開する可能性があるなら、それが何であってもしがみついていたかった。

例え、どんなに小さな可能性だとしても。