神に選ばれなかった者達 前編

翌朝。

目が覚めた俺が、真っ先にしたことは。

ベッドの上に起き上がって、自分の両膝を抱えて蹲ることだった。

それ以外に、俺に何が出来ただろう。

誰にも分かってもらえない。医者でさえ、精神科医でさえ分かってもらえないのに。

この苦しみを、誰が分かってくれるだろう。

…一体どれだけの間、そうしてただ蹲っていただろう。

「…?」

不意に、薄暗い部屋の中で光るものが視界に入った。

何のことはない。自分のスマホだった。

…そういえば。
 
携帯ショップに行ったあの日以来、一度もスマホを触っていなかった。

電源さえ入れていなかったはずなのに、何故かスマホの画面が勝手についていた。

俺は蹲ったまま、そのスマホに手を伸ばした。

電源を切っていたお陰か、まだギリギリ充電が残っている。

10日もスマホを触っていないのに、俺には誰からの連絡も入っていなかった。

そんなものだ。

俺に連絡をしようとする物好きがいようはずがない。

…しかし。

「…」

携帯ショップの店員に相談して、スマホに有料のセキュリティ対策アプリをインストールしたのに。

例の、『処刑場』というアプリが復活していた。

一体何の為に、お金を払ってまでセキュリティ対策をしたのか。

あっさり突破されてるじゃないか。

悔しいとも、あの店員適当なことを、と怒ったりもしなかった。

どうでも良かった。

いっそ、その『処刑場』に連れて行ってくれれば良いのに、とさえ思った。

俺はおもむろに、『処刑場』というアプリを起動した。

これまで、何度もアンインストールするだけで、一度もアプリを起動したことはなかった。

携帯ショップの店員でさえ、こんな迷惑アプリは見たことがないと言っていた。

一体どんなアプリなのか、この目で見てみようじゃないか。

スマホがウイルスに汚染されるかもしれないなんて、そんなことはどうでも良かった。

何度消しても同じアプリが勝手にインストールされている時点で、最早ウイルスに感染しているも同然なのだから。

『処刑場』のアプリのアイコンをタップすると。

「…?これ…」

現れたのは、背景の黒いチャット掲示板だった。