神に選ばれなかった者達 前編

その後も、医者に色々と質問された。

食欲はあるのか、とか。悲しくもないのに涙が出ることがあるか、とか。日常生活は自分で出来るか、とか。

そういった問題は、俺には一つもない。

ただ悪夢を見るだけだ。それだけが全ての元凶なのだ。

そういった体調の問題がないと知ると、精神科医は「うーん」と唸って。

「まぁ夢は夢ですから。そんなに気にしなくて大丈夫ですよ」と言った。

…それはそうなんだが。

死ぬほどの傷みに襲われるのに、気にせずにいられるはずがないだろう。

夢なんて、見た目で判断出来る症状じゃない。

言葉で「こんな夢なんだ」と説明しても、「でも所詮夢でしょ?」と返されるだけ。

その「所詮夢」に苦しめられていることを、どうやって他人に分かってもらえるだろうか。

処方された睡眠薬を飲んで、「二、三日ゆっくり休んだら、悪夢のことなんか忘れるでしょう」と、軽い口調で言われた。

その、二、三日ゆっくり休む、という行為が出来なくて困ってるんだが。

次の診療予約すら取らず、そのまま返された。

果たして、この睡眠薬に効果があるのだろうか。

不安なまま、今日もまた夜を迎えた。