神に選ばれなかった者達 前編

…さっきまで、狂ったようにのたうち回っていた半魚人が。

鋭い瓦礫に口の中から頭を貫かれ、事切れていた。

…まるで串刺しだな。

魚だから串焼き…って、そんな上手いこと言ってる場合じゃない。

「は…。…ざまぁみろ…」

ふぁには、思わずにやりと口角を上げ、勝利宣言を呟いた。

一矢報いてやるだけのつもりだったが、まさか返り討ちに出来るとは。

自分でも、そんなクソ度胸があったことに驚く。

何だか偉大な証明をしてみせたみたいで、珍しく、自分が誇らしかった。

…なんてね。

何が誇らしいことがあろうか。

身体中、自分の血と、半魚人の血と、唾液と胃液にまみれて、ぐっちょぐちょで。

そんな汚い身体を拭う余力も残って無くて、今にも死にそうになってるのに。

…ふぁには確かに、半魚人を打ち倒した。

だけど、それは自分の命と引き換えだった。

ふぁにだって、酷い致命傷を負っていた。

…ほんと、なっさけないよなぁ…。

敵を倒して…その後自分も死ぬなんて…。

それも…こんなみっともない、生臭い匂いをさせて…。

これじゃ、有終の美を飾ることも出来ない…。

…泥を啜って、一本の藁に縋り付いて、情けなく、みっともなく泥沼の地べたを這いずり歩く。

それが、妹尾ふぁにの生き方というものだった。

…あ、駄目だ。

そんな格好良いこと考えてる間に、段々と意識が遠くなってきた。

やっぱり死ぬのか…。仕方ないよなぁ…。

こんなクッサい匂いさせながら死ぬの、嫌だな…。

でも、もうどうしようも出来ないや…。
 
もう、身体の痛みも感じない。
 
視界も真っ暗だし、何の音も聞こえない。

全身の感覚が失われてしまったようだった。

「…ほたる…」

最期の最期に、ふぁには自分の中にいるもう一人に話しかけた。

なぁ、ほたる。聞こえてるか?

あんたさんは、毎晩こいつに殺されて、耐えられなくて自殺しようとしたんだろ?

分かるよ。めちゃくちゃ痛いし、めちゃくちゃ怖いよな。

耐えられないくらい辛いよな。その気持ちはよく分かる。

でもな。

「…仇…取ったからな…」

ほたるが耐えられなかった、その痛み。

ふぁにが代わりに、耐えてみせたから。

だから。







「…戻ってきて、くれよ…」


一人じゃ耐えられないことでも。

二人なら、耐えられるかもしれないじゃないか。