神に選ばれなかった者達 前編

こんな簡単なことだったんだぜ、ほたる。

ほたるも、ふぁにみたいにしてれば良かった。

いじめられることは、決して本人が悪いんじゃない。

いじめる馬鹿が悪いのだ。

「いじめられる奴にも責任がある」って、巷ではよく言われてるけど。

そりゃ確かにそうなのかもしれない。その言い分は分かる。

でもな、それは他人事だから言えるのだ。

仮に自分や、自分の大切な人がいじめられていたら、同じことを言えるか?

ふぁにには言えない。

だから、ほたるも…黙っていじめられている理由なんかなかったのだ。

もっと抵抗すれば良かった。ふぁにみたいにさ。

でも、出来なかったんだよな。

ほたるには、そうするだけの勇気も、心の余裕もなかった。

無理からぬことだ。

こればかりは、生まれ持った性格の問題だ。

それに…誰一人味方をしてやらなかった、妹尾家の家族のせいでもある。

ふぁにはこの世に生まれてから何度も、ほたるに声をかけ続けた。

ほたるがふぁにのことをどう思っているのかは知らない。

そもそも、ほたるは多分、身体の中にふぁにがいることさえ知らないのだろう。

だけどふぁににとって、ほたるは友達だった。

長年一緒にいた、これからも一緒にいる、大事なルームメイト。

いつだって同じものを見て、同じ音を聞いて、痛みも苦しみも、全部共有する仲間。家族。

人生のパートナーと言っても過言ではない。

だからふぁには、ほたると仲良くやって行きたかった。

ほたると身体を分け合って、協力して生きていきたかった。

一人で耐えられないことでも、二人なら耐えられるかもしれない。

多分その為に、ふぁにはこの世に生まれたんだと思うから。

だから、ふぁにはほたるに起きて欲しかった。

話をしたかった。ずっと傍に居たんだよ、って言ってやりたかった。

自分のことを一人ぼっちだと感じて、酷い孤独を感じていたに違いないほたるを、励ましてやりたかった。

でも、駄目だった。

ふぁにが生まれて、何年も経って、今日に至っても。

ほたるは、一向に目を覚ます気配がない。

この身体の中で、死んだように眠っているだけだ。

分かるのだ。…ほたるの気配を、全然感じない。

ほたるは未だに、自分が一人ぼっちだと思って、目を覚ますことを拒否している。

果たしていつか、ふぁにが生きている間に、ほたるが目を覚ます日が来るのだろうか。

分からない。正直、自信がない。

だって、目を覚ましたとしても、ふぁにとほたるの前に待っているのは、

いつだって、現実以上に悲劇的で、現実的な悪夢なのだから。