神に選ばれなかった者達 前編

別に、机に落書きされていたことにびっくりしたんじゃねぇよ。

いじめのテンプレートだもんな。机の落書き。

敢えて彫刻刀で彫るという、謎に仕事が丁寧なところはちょっと感心した。

すげー暇なことしてんな、と思うだけ。

ほたるの机に、彫刻刀を持って熱心にカリカリしてる、いじめっ子の姿を想像すると。

なんか、ちょっと微笑ましいよな。

必死だなぁって感じで。

その情熱を、別の方面に向けることが出来たなら、きっと大成しただろうに。

どうせ彫るなら、もっと凄いものを彫れよ。

鮭咥えた熊とかさぁ。

それよりふぁにがびっくりしたのは…。




…授業終了後。

待ってましたとばかりに、にやにやしながらクラスメイトがやって来た。

…どちら様?

そのクラスメイトは、挨拶代わりに机をガッ、と蹴っ飛ばした。

何しやがんだ。いてぇだろ。

「とうとう不登校になったかと思ったら、遅れて来やがったか」

「…はぁ…」

「何しに来たんだよ?誰もお前の顔なんか見たくないんだけど?」

「…」

…あ、そう。

としか言いようがない。

それは申し訳無いね。こちらとしても、もう少しイケメンな顔を見せられたら良かったんだが。

でも、自分で自分の顔は変えられないからな。整形でもしない限りは。

自分ではどうしようもないことをディスられても、「うん、まぁそうだね」としか言えない。

…それよりも。

「…これ、あんたさんが彫ったのか?」

ふぁには、机の上の文字を指差した。

「は?」

「あんたさんがやったの?」

「…それが何だよ?」

…ふーん。やっぱりあんたなんだ。

そうか。じゃあ、これだけ言わせてもらおうか。

「…なぁ、あんたさん、恥ずかしくないのか?」

中学生にもなって。なぁ。

「バカだのアホだの、カスだの…。何だその語彙力の貧弱さは?もっと、こう…あるだろ?」

「な、何なんだよ?」

自覚がなかったのか。

ふぁににそんなこと言われるとは思ってなかった、って顔でたじたじしている。

だがな、ふぁには言わせてもらうぞ。

「どうせ彫るなら、『頓珍漢』とか『愚か者』とか…せめて『バカ』にしても、漢字で書けよ」

え?画数が多くて難しいって?

そのくらいやれ。中学生だろお前。

中学生にもなって、バカだのアホだの…。小学生かな?

今日日、小学校低学年でももうちょっと悪口のボキャブラリーが豊富だと思うぞ。

「ったく…はぁ、情けない…」

ふぁになんて、まだ生まれて数日だぞ?

あんた、もう生まれて十年以上経ってるんだからな。

もう少し、理知的になって欲しいもんだね。

ふぁにが驚いたのは、それだよ。

中学生にもなって、あまりに幼稚な言葉遣いで心底びっくりした。