神に選ばれなかった者達 前編

…気がつくと、朝になっていた。

「…う…」

押し入れの壁に頭を押し付けて、身体を捻ったみたいな格好で。

…こんな不格好な寝相じゃ、そりゃ悪夢も見るわ。

瓦礫に内臓を押し潰され、すりこ木でミンチにされたかのような痛みが、生々しく身体中に残っていた。

畜生…。まだこの世に生まれたばかりだっていうのに、何でこんな…。

とにかく、押し入れの外に出て身体を伸ばしたかった。

こんなところに居たんじゃ、治るものも治らない…。

…の、だが。

「あ…」

押し入れの扉は、押しても引いても開かなかった。

…そうだった。

妹尾家の旦那さん…つまりはほたるの親父のせいだ。

あいつ、毎晩ふぁにが寝てる押し入れに、南京錠をかけて閉じ込めてるんだった。

寝てる間にふぁにが悪さしないように、って。

畜生。基本的人権の侵害だろ。開けろよ。

仕方なく、窮屈な思いをしながらしばらく待つことにする。

…その時。

「…ん…?」

押し入れの中に、古ぼけたガラケーを発見した。

…。

…これ、ほたるの携帯電話だよな?

今時、滅多に見かけない…旧式のガラパゴス携帯…。

…これはほたるの携帯電話なのであって、ふぁにのものではない。

他人の携帯電話を勝手に見るという行為は、例え親子間であってもトラブルのもとになりがちなので、気をつけた方が良い。

友達間、または夫婦間だと、更に恐ろしい事態に発展する可能性もある。

…けれど、ほたるは最早居なかった。

呼びかけても、答える気配はまるでない。

持ち主をなくした携帯電話を、ふぁには徐ろに、手に取ってみた。

ふぁにはまだどのボタンも押してないのに、何故か携帯電話の画面が光っていた。

そして、そこにあったのが。

「…『処刑場』…?」

そう。悪夢に巻き込まれた生贄達が、現実において互いに集う場所。

『処刑場』という、皮肉な名前がつけられたネットの掲示板だった。

そこを見て。ふぁには自分の悪夢の正体を知った。