神に選ばれなかった者達 前編

ただでさえ、朽ちてボロボロになっていたピラミッドの内部。

不可抗力とはいえ、壁に体当りしてしまったことで、ピラミッドが崩れ始めた。

一部が崩れると、絶妙な均衡を保っていたピラミッド全体が、連鎖的に断末魔の悲鳴を上げていく。

明らかにヤバいんだわ、これ。

ミシミシ、バキバキ、と四方八方からヤバい音がするんだもん。

それどころか地震みたいに、ゴゴゴゴ、と地鳴りまで聞こえてきた。

これはヤバい。たかが頭蓋骨に蹴躓いて転んだだけなのに。

たったそれだけのことがトリガーになって、今、ふぁにの身に危険が降りかかろうとしていた。

ピラミッドの外には、さっきの気持ち悪い半魚人がいる。それは分かっている。

だけど、このままじゃ半魚人の餌にされなくても、ピラミッドに押し潰され。

晴れて、足元に無数に散らばっている骨達の仲間入りを果たしてしまう。

笑い事じゃねぇんだっての。

ともかくピラミッドから脱出しようと、必死に壁に取り付いたが。

「おいおい…!嘘だろ?」

目の前に、巨大な屋根の瓦礫が落っこちてきて。

壁の出口を、完全に塞いでしまった。

マジかよ。冗談じゃねぇ。

必死に、瓦礫を拳でぶん殴ったが。

いくら脆くなっていると言えども、こんな大きな瓦礫が、素手でぶん殴ったくらいで壊れるはずがなかった。

むしろ、殴ったふぁにの手の方が痛かった。

背に腹は代えられない。

何とか別の出口を探そうと、周囲を見渡したが。

ただでさえ辺りは真っ暗で、視界が効きにくい上。

足元には瓦礫と骨が散らばって、とてもじゃないが動き回って出口を探す、なんてことは出来ない。

おまけに、とどめとばかりに。

ビシッ!と嫌な音がして、ついにピラミッドが傾いた。

「…!!」

バカでかいピラミッドの瓦礫が、こちらに向かって落っこちてくるのが、やけにゆっくり見えた。

まるでスローモーション。

万事休すだった。

こうなっては、ふぁにに出来ることは何一つない。

巨大な瓦礫が、ふぁにをぷちっ、と押し潰し。

内臓を全部口から吐いて、晴れて、ピラミッドに散らばった遺骨達と同じ運命を辿った。

…これが、ふぁにの夢の中での初めての死だった。

これなら、まだバケモノに殺される方がマシだった。

うっかり蹴躓いて、壁に潰されて死亡だなんて。

あまりに間抜け過ぎて、さすがに笑えない。