神に選ばれなかった者達 前編

最初こそ、出来るだけ骨を踏まないように、避けて歩いていたものの。

あまりの骨の多さに、段々避けるのが面倒になっていって。

僅か5分後には、もう遠慮なく骨を踏みつけ踏みつけ歩いていた。

…え?罰当たり?

夢の中だからセーフ。

しっかし長い夢だなぁ。そろそろ朝なんじゃねぇの?

夢の中で自分が夢を見ている自覚があるのって、あれなんて言うんだっけ。…明晰夢?

明晰夢だったら、自分の思うように、自由に夢をコントロール出来るんじゃねぇの?

ここから怒涛の展開を見せて…ウミガメに乗った人魚が現れて、「あなたを迎えに来ました」とか言われて。

龍宮城に連れてってもらって、大変良い思いをした後に玉手箱をもらって…みたいな。

折角ならそういう夢を見たい。

こんな、骨まみれの海底都市の夢じゃなくてさ。

あとは…何だっけ。縁起の良い夢…。

そうだ、富士山に登って、飛び回る鷹を眺めながらナスビ食ってる夢。

あれを見られたら最高だな。めちゃくちゃ良いことありそう。

ほたるのこれまでの人生遍歴からして、これから先、良いことありそうな気がしないけど。

大丈夫。ほたるとふぁには、同じ身体を共有しているだけで別人だから。

ふぁにの人生はきっと、これから良いことがある…。

…と、素直に思えたら良かったんだけどなぁ。

おまけに。

「…ぶはっ…!」

足元が覚束無いせいか、それともつまんない妄想に夢中になっていたせいか。

足元の、比較的大きめの骨に蹴躓いた。

その拍子に、ピラミッドの壁に、盛大に額をごっつんこ。

目の前に、チカチカと火花が散った。

「あぁぁぁ、いってぇぇぇ…!」

思わず、額を両手で押さえた。

血、これ血ぃ出てんじゃねぇの?ってくらい痛い。

やべ、痛みのあまり、生理的な涙が。

これから先良いことあるはずだよ、って思った途端にこれ。

ふざけんなよ。フラグじゃねぇんだよ。

お前に良いことなんかあるかよwって、運命の神様的な人に笑われてる気分だ。

一体何に躓いたんだと、足元をよく見てみたら。

ひときわ大きな頭蓋骨が、半分に割れて床に転がっていた。

これかよ。躓いたのは。

ふぁにが躓いたせいで、半分に割れちゃってんじゃん。ごめんな。

両者痛み分け、ってところか。

「…はぁー…。いったぁ…」

まったくろくな目に遭わない。現実でも身体中痣まみれで痛いのに。

夢の中でまで痛い思いしてんじゃ、割に合わない…。

…と、思ったが。

ふぁにの不幸は、これだけで終わりではない。

むしろ、ここからが本番だった。

ふぁにがピラミッドの壁面に、思いっきりごっつんこと頭突きしてしまったせいで。

ぶつけた部分に、ミシミシミシ、と大きな亀裂が入り始めた。

…あ、これやべぇ奴だ。