神に選ばれなかった者達 前編

下手くそな泳ぎで、残骸が見えた方に向かうと。

「うわー…。すげ…」

びっくりだよ。

だって、目の前に海底都市があるんだもん。

そりゃ誰だってびっくりするだろ。

何千年、何万年も前に海の底に沈んだ都市、って感じ。

朽ちてボロボロになっているが、確かに文明の息を感じられる。

凄いな、これ。歴史的大発見じゃね?

人魚とか住んでそう。

あ、でもここ夢の中だから、現実とは関係ないんだった。

勿体ない…。その手のファンタジーが好きな人が見たら、きっと大興奮だったろうに。

ふぁにが見ても、ぜーんぜん面白くない。

ふーん凄いね、以外の感想が出てこない。

語彙力貧弱でごめんなさいね。

一体いつ頃出来た都市なんだろうな…と。

考えながら、しばらくふわふわしていると。

「…!」

途端に、ぞっとするような気配を感じた。

…来る、なんか来る。

慌てて、そちらの方を向く。

…これが他の人間だったら、もっと近くにならなければ見えなかっただろう。

でも、ふぁにには見える。

無人となったはずの海底都市に、バケモノが迫り来るのが。

身体の半分が人間で、もう半分が魚。

マーメイドなんて可愛いもんじゃない。気味の悪い半魚人だった。

鋭い牙がギラギラ光るところまで見えた。

あれはヤバい。絶対にヤバい。

「ヤバい…。逃げないと…」

この時点でふぁにはまだ、戦うことは考えていなかった。

まずは逃げること、そして隠れることを考えた。

当たり前だ。誰が好き好んで、あんなバケモノと戦うかよ。

そして、あの半魚人こそ。

ふぁにの中のもう一人である、妹尾ほたるを幾度となく殺し、彼の心を折った原因だったのである。

幸いなことに、この崩れた海底都市には、隠れるところがたくさんあった。

ふぁには素早く辺りを見回し、自分が隠れられそうな場所を探した。

目が良いのが、こんな時に役に立つ。

…よし。

ふぁには、崩れかけたピラミッドみたいな建物を見つけた。

そのピラミッドの壁を崩して、隙間に自分の身を捩じ込んだ。

言葉にするのは簡単だが、それは簡単なことではなかった。

建物は朽ちているとはいえ、結構頑丈なピラミッドだったらしくて。

壁を崩す為に、割れた瓦礫みたいなのをガンガン叩きつけた。

その際に手を擦りむいて、じわじわと出血していたが。

背に腹は代えられないので、構わず掘削作業を進める。

何とか、身体を捩じ込めそうな穴が出来た。

そこに、無理矢理身体を押し込んだ。

穴の入り口に身体が引っ掛かって、捩じ込むのに苦労したが。

ともあれ、隠れ場所は何とか確保出来た。