神に選ばれなかった者達 前編

ふぁにがほたるから引き継いだのは、この身体だけじゃなかった。

翌日の夜から、ふぁにの本当の地獄が始まった。

ほたるが耐えられなかった全てを、ふぁにが肩代わりしなければならないのだから。







その夜、窮屈な物置の中で眠りについて。

気がつくと、ふぁには海の底にいた。

「…!」

暗い深海の底に立っていた。

…何故か、片手に弓矢を持って。

海の底にいることよりも、弓矢を持っていることの方に驚いた。

…すげー、これ本物?

つっても、海の中でどうやって弓矢を射てば良いんだ…?

そもそも、弓矢の射ち方なんて知らない…。

なんか、こう…ぐーっと引っ張って、ばしゅっ、と射てば良いんだろ?

…想像だけど。

何でこんなもの持ってるんだろう…。つーか、ここ何処…?

今、ふぁには夢の中にいるんだよな…?

この世に生まれて一回目に見る夢がイケメンで、二回目に見る夢が、海底の底を浮遊している夢だなんて…。

…意味不明だな。

折角なら、こんな暗い海じゃなくて、もっと明るい海が良かった。

生き物の気配も全然ない。

可愛いクマノミちゃんとか、面白いチンアナゴとか、幸運のウミガメとか。

そういう生き物を所望する。

…それどころか。

「…ん…?」

深海の底を、ふわふわとクラゲみたいに浮遊していると。

暗い足元に、何か白いものが見えたような気がした。

これはちょっとした余談だが、ふぁには生まれつき目が良い。

ほたるよりも、だ。

同じ身体を共有しているはずなのに、片方の人格は目が良くて、もう片方はそうでもない、って。

一体どういう違いなのか、人格によって物の見え方も違うってことなんだろうか。

分からないけど、とにかく、ふぁににはそれが見えた。

深海の底を攫ってみると、現れたのは骨だった。

人間の…多分、この形は…股関節?辺りの骨だろうか。

…グロッ…。そしてキモッ…。

深海の底で見つけたのが、真珠でも玉手箱でもなくて、股関節の残骸って。

何?この不気味な悪夢。

そっと骨に触れると、さぁっと砕けて波に漂った。

…ごめん、そのつもりはなかったんだけど…誰かさんの遺骨、粉々にしちゃった…。

昔、海で水葬された人の遺骨だろうか…。

と、考えていると。

「んん…?」

彷徨っている視界の向こうに、ぼんやりと何か、建物の残骸のようなものが見えた。

…何だ、あれ。

とりあえず、行ってみるとしよう。