神に選ばれなかった者達 前編

そして、ほたるは自らの目的を遂げた。

ほたるは死んだ。…妹尾ほたるという人格は。

身体だけが生きている。擦り傷まみれ、痣まみれで生き残っている。

だけど、その中身、妹尾ほたるは死んだ。

ほたるは死んだけど身体は生きているから、ほたるの別人格であるふぁにが、意識の表層に押し出された。

身体だけそのままで、中身だけ別人にすり替わってしまった…。

…なんて、酷い。

こんな酷いことってあるかよ?なぁ。

起きてくれよ、ほたる。

ふぁにはまだ、あんたの声を聞いていない。

あんたがどんな人間で、どんなことを考え、どんな風に生きてきたのか。

身体を共有していながら、同じものを見て、同じものを聞いて、同じように生きてきたのに。

誰よりもずっと近くに、傍にいたのに。

それなのに、ふぁにはほたるが何を考えてるか知らない。

ほたるのことを誰よりもよく知っていて、それなのにほたるは、ふぁにのことを知らない…。

そんなことってないだろ。なぁ。

教えてくれよ。一緒に生きてきたんだ。だから、これからもふぁにと一緒に生きてくれよ…。

「…ほたる…」

…何であんたは、ふぁにを生み出したんだよ。

ほたるにとって、ふぁには何なんだよ。

都合の良い身代わりか?家族か?兄弟か?

…友達、か?

「…ほたる…」

何度呼んでも、呼んでも。

その声が、ほたるに届くことはなかった。








…ズルいだろ、ほたる。

自分が耐えられないからって、ふぁにに全部押し付けてさ。

それでもふぁには、ほたるが耐えられなかった運命を生きていかなければならない。