神に選ばれなかった者達 前編

その日の夜。

ふぁには、非常に意外な人物から、真相を知らされることになる。





…深い夢の中で、誰かがふぁにに謝った。

「…済まない」

それが凄く申し訳無さそうな声で、反射的に「良いよ」って言ってしまいそうになった。

この後ふぁにに起こることを思えば、とてもじゃないが「良いよ」の一言では許せなかったのだが。

それどころか、助走つけてぶん殴っても許されるレベル。

誰なんだろう、何処の誰がそんな悲壮な声で、ふぁにに謝ってんだろう。

もやもやとした白い霧の向こうに、謎のイケメン風の青年が見えたような気がした。

おい、何だあのイケメン。

イケメンも…謝罪することってあるんだな…。

…ふぁにはイケメンのことを何だと思ってるんだ?

生まれながらの選ばれし上等民族だと思ってた。

あまりに眩しくて、ふぁににはとても手が届かない。

そのイケメンが、ふぁにに向かって言った。

「…本来、生贄に選ばれたのは妹尾ほたるだった」

…は?

何でまた…そこで、妹尾ほたるの名前が出てくるんだ?

生贄…?って、何のこと?

あんた、ほたるのこと知ってんの?

つーか、あんた誰?

聞きたいことは山ほどあるのに、何故か声が出なかった。

「だが…いくら『人格が入れ替わっても』、生贄の定めからは逃れられない」

…じん、かく…。

…人格?

その言葉に、ふぁには電流に貫かれたような衝撃を覚えた。

そう…人格だ。

「お前は、妹尾ほたるが生み出した別人格だ。妹尾ほたるとは無関係の別人だということは分かっている」

「…」

「それでも…妹尾ほたるが耐えられないならば、今度はお前が生贄の定めを引き受けることになる」

…その時だった。

ふぁにが、この世に生まれてきた意味、その理由を知ったのは。

…あぁ、そう。

そういうこと…そういうことだったんだ。

…思い出したよ。

ふぁにが…一体どういう経緯で、何故この世に生まれてきたのかを…。

「…済まない。どうか、これ以上苦しまないように…」

謎のイケメン青年の声が、段々と遠ざかっていった。

咄嗟に手を伸ばしたけれど、霧に包まれているようで、前後左右も不覚だった。

そして、そのまま…意識が途切れていった…。




…こうして。

妹尾ほたるの別人格、妹尾ふぁにが、この世に生まれ。

そして、妹尾ほたるが耐えられなかった生贄の苦しみを、ふぁにが代わりに引き受けることになったのだ。