神に選ばれなかった者達 前編

この家の人間は、揃いも揃って。

家にお客さんが来たら、まずはガンをつけるのが礼儀なんだろうか。

失礼だろ。

どころか、憎しみの眼差しさえ向けてきていた。

…何で…?

…ふぁに、なんか悪いことでもしました?

今日生まれたばかりなのに、どうやって悪いことするんだよ…。

「…ちっ」

妹尾家の旦那さんは、ふぁにを見て舌打ちを一つ。

は?

そして、何も言わずにさっさとリビングに歩いていった。

…後で知ったことだが、この時ふぁには、旦那さんに殴られていてもおかしくなかったのだ。

舌打ち一つで済ませてもらったのは、まだマシだった。

しかし、そんなことはまだ知らないふぁに。

突然舌打ちされて、しかも何も言わずに無視されたことに、内心激おこだった。

おい。舌打ちして立ち去るなんて、どういう了見だよ。

ったく、どいつもこいつも…ふぁに以外、全員常識ってものが欠如してんじゃねぇの?

いい加減文句つけてやりたい…ところだったが。

ふぁにが激昂する前に、突然。

ふぁににとっては、青天の霹靂とも言える「真実」を知らされる。

何やら、薄汚れた器を手にした、妹尾家の男子小学生の坊主がやって来た。

そして、ほたるに向かってその器を突き出し、こう言ったのだ。

「おい、クソほたる」

…。

…は?

…え?今、ふぁにのこと呼んだ?

まさか後ろに誰かいないよな?と思って、がばっと振り向くも。

そこは押し入れがあるだけで、勿論誰もいない。

「え?いや…」

人違いだろ?ふぁにはふぁにだよ。ほたるじゃない。

「何ボーッとしてんだよ、ほら、お前の餌」

と言って、坊主はふぁにに、薄汚れた器を押し付けてきた。

え、ちょ、何これ?

いや、それより。そんなことより。

「ちょ、ちょっと待って」

「は?」

渡すものを渡して、さっさと立ち去ろうとする坊主を、ふぁには急いで呼び止めた。

肝心なことを聞かせてもらうぞ。

「…ほたるって…自分のこと?」

ふぁに、ほたる?

妹尾ほたるなの?

「はぁ…?何言ってんの、お前。頭打って、記憶でもなくしたのか?」

「え…いや…」

知らん。そうなのか?

何が何だか、ふぁににもさっぱり分からないんだよ。

「お前がほたる以外、何だってんだよ」

「…!」

「良いか?覚えとけ。お前の名前は妹尾ほたる。妹尾家一番の出来損ないだよ」

ふふん、とせせら笑われ。

「調子乗んな小坊!」と、ぶん殴ってやるところだったが。

あまりに驚き過ぎて、そんな心の余裕さえなかった。