神に選ばれなかった者達 前編

さて、それはともかくとして。

そんな気の毒なほたる君の事情は、ぶっちゃけ、ふぁには関係無い。

ふぁにはほたる君とは無関係の人間なんだから、それは当然というものだが…。

…で、ふぁには一体いつまで、この狭苦しい押し入れにいれば良いんだ?

そろそろ出たいんだけど?

「…いたたたた…」

ただでさえ、歩道橋から落っこちたせいで、身体中がズキズキしてるのに。

こんな狭いところにいたら、余計痛くなるっての。

ふぁには、着ていたよれよれの服の下を覗いてみた。

そして、その酷い有り様にびっくり仰天した。

何これ?ふぁにの身体、水玉模様?

って、思うくらい、全身痣だらけ。

歩道橋から落ちたんだから、痣だらけなのは当然だが。

そうじゃなくて、もっと古い傷痕がたくさんある。

何だこれ。いつからこうなってたんだ?

そりゃあ全身痛い訳だよ。こんな痣だらけだったら。

殴られた後、つねられた後…あとは、これ…火傷の痕か?

まるで煙草の火をぐりぐり押し付けたみたいな…。

それに、この身体はやたらと痩せっぽちだった。

まともに物を食べてない身体だよ、これ。

あばら骨が浮き出ていて、筋肉も全然ついてなくて、足なんて大根どころか、ゴボウみたい。

何これ…。…どうなってんの?

歩道橋から落っこちた云々は関係無い、よな?

…それにしてもふぁには、何だって歩道橋から落っこちたりしたんだろうな?

前後の経緯が、記憶に残ってない。

大体、ふぁに、さっき生まれたばっかだし…。

…なんつーか、他人の記憶みたいな…。

…駄目だ。やっぱり分かんない。

分かんないなら、聞こう。

ここで悶々としてても仕方ない。

さっきの、妹尾家の奥様に直接聞こう。

「自分、何でこんな傷まみれなんですか?」って。

いや、その前に「自分は何でこんなところにいるんですか?あんた誰?」って聞こう。これが最優先事項。

よし、行くぞ。

ふぁには、押し入れの扉をガラッと引いた。

すると。

「…あ…」

「…」

押し入れから這い出ようとしたところで、妹尾家の住民と鉢合わせした。

見たことのない人だった。

背がすらっと高い、感じの良さそうなおじさんと目が合った。

…えーと。

…どちら様?

…多分だけど、妹尾家の旦那さん…だろうか?

つまり、さっきの兄弟達と…妹尾ほたるのお父さん。

どうもっす。…お邪魔してます…。

「え、えぇと…」

何か言おうと思って、口を開きかけたのも束の間。

妹尾家の旦那さんは、ふぁにを見るなり、路傍のゴミでも見るかのような目をした。