寝起きのぼんやりとした頭で、しばし考えた。

…何だったんだろう。今の…。

酷く夢見が悪い。

それに、何故か嫌な予感がするような…。

しかし。

「響也兄ちゃん?」

再度、こんこん、と扉をノックされ。

俺は、考えるのをやめて起き上がった。

「…起きてるよ」

「あ、良かった。おはよう」

扉が開けられ、そこにひょいっと顔を覗かせたのは。

「眞沙(まさ)…。…おはよう」

俺を兄と呼ぶが、弟ではない。

二つ年下の、従兄弟の眞沙である。

俺は、この従兄弟の家に居候している身分なのだ。

「どうしたんだ?こんな時間に…」

「いや、今日は朝練がないから、響也兄ちゃんと一緒に学校に行こうと思って」

あぁ、成程…。

中学生の眞沙はサッカー部に所属していて、普段は俺が家を出る前には既に登校して、部活の朝練に参加している。

だが、今日はその朝練がないから、ゆっくり登校出来るらしい。

だからって俺を誘おうとするのは、お前くらいのものだよ。

そんな従兄弟の好意を、邪険にはしたくなかった。

「分かった。…すぐに支度する」

「うん、待ってる」

この時にはもう、頭の中に残る不思議な声のことは忘れていた。

…いや、忘れようとしていた。