神に選ばれなかった者達 前編

…分からん。

ほたる君ってのは、一体どんな子なんだろう。

どうやら、妹尾家でみそっかす扱いされていることは分かった。

押し入れなんかに寝泊まりしていること、他の兄弟の作品はたくさん飾ってあるのに、家の中にほたる君の作品が一つも飾っていないことで分かる。

…それに、奥さんも兄弟達も、ほたる君のことについて、一言も口にしていなかった。

まるで、家族としてカウントされていないかのように…。

何でそんな扱いをされてるんだ。普通に虐待じゃん…。

と思いながら、ふぁには徐ろに、雨に濡れたノートを捲った。

「…!」

思わず、ノートを捲る手が止まってしまった。

そこに現れたのは、妹尾ほたるが、家族どころか。

学校でも、ろくに人間扱いされていないという証拠だった。

ノートはめちゃくちゃだった。

雨に濡れているからではない。それは別にして。

ページはズタズタだし、油性ペンでいくつも、酷い罵倒の言葉が書き記してあった。

「ウジムシ」とか「消えろ」とか、「クズ」とか「害虫」だとか。

その他、乱暴で、冷酷で、人の人権を踏みにじり、めちゃくちゃにする言葉が…。

…よくもまぁ、こんな酷い罵倒の言葉が思いつくもんだ。

読んでるだけで、心がぎゅっと苦しくなる。

ふぁには、ノートをぺらぺらと捲った。

全部は読めなかった。あまりに悲惨な気分にさせられたから。

でも、拾い読みするだけで充分だった。

まさかこれ、自分でやった訳じゃあるまい。

他の誰かにやられたのだ。…妹尾ほたるに悪意を向ける誰かに。

酷いもんだ。本当に酷い。

ノートだけじゃない。

鞄の中に入ってる教科書も、同様だった。

ページがズタズタに引き裂かれていて、その上から酷い悪口が書き込んであった。

教科書作った人に謝れよ。なんてことするんだ。

タチの悪いことに、ご丁寧に油性ペンで書いてあることも腹立つ。

鉛筆とかシャーペンだったら、自分で消せるのに。

せめて水性ペンだったら、雨に濡れたことでインクが滲んで、なんて書いてあるのか判別出来なかっただろうに。

油性ペンで書いてあるもんだから、消しゴムじゃ消せないし、雨に濡れてもきちんと読める。

更に酷いのは、鞄の中に入っていたペンケース。

蓋はバッキバキに壊されているし、2本しかない鉛筆はちびて折れ。

消しゴムはと言うと、長い間使い古しているようで、その大きさは豆粒未満。

これでどうやって消すんだ?って感じ。

新しいの買ってもらえよ…いくら何でも。

消しカスまるめた奴かと思ったじゃん…。

酷い…と言うより、悲惨だな。ここまで来ると…。