神に選ばれなかった者達 前編

「病院?何で?」

と、尋ねる息子くん。

それ、ふぁにも知りたい。

何でふぁに、さっき病院にいたんだろう?

「足を滑らせて、歩道橋から落っこちたんですって」

何それ。超間抜け。

「何だよそれ。馬鹿じゃねぇの?」

ほら。息子くんも同じこと言ってるじゃん。

我ながらすげー馬鹿なんだけど。

普通、落ちる?歩道橋から。足を滑らせて。

有り得ないだろ。足元にバナナの皮でも落ちてたのか?

「つーか、それでよく生きてたな」

ふぁにも同感。

運が悪かったら死ぬぞ。…いや運悪くなくても死ぬだろ。

よく生きてたなー自分。

あ、全身痛いのはそのせいか?

歩道橋から落ちたせい?

自分の怪我の理由を、今になってようやく把握。

そういや、病院で医者が「車の通りが〜」云々言ってたな。

あの時は意味不明だったけど、あれはそういうことだったのか。

歩道橋から落っこちた上に、車にまで轢かれていたら…。

…ぶるっ。

思わず身震いしてしまった。

もし車に轢かれてたら、今頃自分、間違いなくミンチになってたぞ。

危ねぇ…。と思うと共に、自分の生命力の強さを実感。
 
ふぁにつえぇ。

「なーんだ。それで悲劇のヒロインヅラして、ここで構ってちゃんしてる訳か」

…は?

誰が構ってちゃんだと?

聞き捨てならないこと言ってるな。

…つーか、歩道橋から落ちるのは充分悲劇だろ。

もうちょっと労ってくれても、バチは当らないんじゃねぇの?

別にふぁに、構ってちゃんして欲しくてソファに座ってんじゃねーから。

「くだらねぇ。構って欲しけりゃ、落ちて死ぬくらいのことやってみせろよ」

何言ってんだてめぇ。

死んだら終わりだろうが。そんな当たり前のことが分からないのか?

「頭打って、少しは賢くなってりゃ良いけどな」

と、吐き捨てるようにせせら笑って。

超失礼な息子は、さっさとリビングを出ていった。

…何?あいつ。

性格悪過ぎるにも程があるだろ。

つーか、何なの?この家の家族の、ふぁにに対する態度。

そもそも、あんたらは一体何者なんだよ。誰?

まずそこが分かってない。

あの人達にとって、どういう立場で、ふぁにはあんなに酷い罵倒を受けてんの?





…しかし、ふぁにに対する失礼な態度は、奥さんと息子だけに限らなかった。