神に選ばれなかった者達 前編

それだけじゃない。

外のベランダには、洗濯物が干してある。

その中に、子供のものと思われる洗濯物が、ちらほら。

やっぱり、この家には子供が何人かいるようだな。

…え?人様の家の洗濯物を勝手に見るなよ、って?

しょうがないじゃん。

嫌なんだったら、客人に見えるところに洗濯物を干すな。

にしても、今日日珍しいよな。そんな何人も兄弟がいるの…。

自分には、兄弟なんて存在が明確に、

と、思っていたその時。

ガチャッと玄関の扉が開いて、誰かが入ってきた。

「ただいまー」

…お。誰か帰ってきた。

誰だろう。兄弟のうちの誰かか?

見たところ…男子中学生?高校生?のようだな。

「あら、お帰り」

おばさん、もといこの家の奥様…もとい、今帰ってきた子供のお母さんが。

息子に向かって、優しい笑顔を向けて出迎えた。

おい。なんか納得行かねぇ。

ふぁにに対しては、あんな塩対応だった癖に。

我が子に対してはそれかよ。

「はー、疲れた疲れた…」

とか言いながら、上着をその場に脱ぎ捨てている。

おい。お行儀悪過ぎだろ。

服は脱いだらカゴに入れなさい、って目の前のお母さんに習わなかったのか?

まぁ、ふぁには習ってないけども。

親いないからな。ついさっき生まれたばっかだし。

「…は?お前何やってんの?」

は?

息子くんが、こちらをジロッと見た。

何だその目は。こちとらお客様だぞ。

何やってんのと言われても…ただソファに座ってるだけだが。

「勝手にそこ、座ってんじゃねぇよ。邪魔だ」

と言って、息子くんは自分の持っていた学生鞄を、ガッ、とふぁにの後頭部にぶつけてきた。

いった!

…と、言いたかったが、びっくりし過ぎて声も出なかった。

やる?普通。見ず知らずのお客人に。鞄をぶつけるなんて悪行。

これは立派な暴行だぞ。

馬鹿なんじゃねぇの?今、ふぁにが頭に包帯巻いてるのが見えないのか?

ただでさえ痛かった頭の傷が、ズキッと傷んだ。

このとんでもない所業に、さすがにお母さんもブチギレる、いやブチギレて欲しかったが。

お母さん、完全に無視。

自分の息子がやったことを見ても、まったく興味関心がないようだった。

嘘だろ?何なのこの親子。

常識外れ過ぎて、逆に怖いんだけど。

「つーかこいつ、何でこの時間に家に居るんだよ?」

「知らないわよ。病院から電話がかかってきて、さっき迎えに行ってきたの」

…え?

病院って…さっきの病院のことだよな?

あの失礼な看護師と失礼な医者がいたところ…。