神に選ばれなかった者達 前編

ふぁには、そのおばさんに連れられて、病院を出た。

歩く度にじわじわと全身が痛かったのだが、おばさんはまったく気にかけてくれなかった。

それどころか、もたもたしているふぁにを見て、さっさと歩け、と言わんばかり。

ついさっきまで病院のベッドに横たわっていた人間に、そんな機敏な動きを要求するな。

おばさんは、病院の駐車場に停めた車に向かっていった。

…これ、おばさんの車なんだろうか?

ふぁににも、これに乗れって言ってんの?

「…」

ちらっ、とおばさんを見ても、無視して運転席に乗り込んでいる。

…あ、そう。

助手席に乗る…のは、何だか鬱陶しがられそうな気がしたので。

仕方なく、後部座席のドアを開けて、そこに乗る。

あぁ、いててて…。

身体をちょっと動かすだけで、あちこち痛む。

何なんだろうな、これ…。痣でも出来てんの?

車に乗っている間、おばさんは一度も話しかけてこなかった。

無愛想だけど、それはそれで構わなかった。

ふぁには、窓の外の景色をじーっと眺めていた。

何せ今のふぁには、世界に生まれたばかりだから。

初めて「外の世界」をこの目で見て、感動しないはずがない。

世界の色に感動していた。

凄いなー…。もっと早く知りたかった。

…ん?もっと早く…?

何のことだっけ、と考えている間に。

おばさんの運転する車が、一軒の家の前に駐車。

…あれ、ここに停まんの?

…ここが目的地?ここで降りて良いんだよな?

ふぁにとしては、もう少し外の景色を楽しみたかったところなんだが…。

おばさんが車のエンジンを切って降りたので、ふぁにも同時に降りる。

この家…おばさんの家なのだろうか。

おばさんは家の鍵を開けて、中に入って行った。

ふぁにに何も言わず。

…ふぁにも入って良いんだよな…?

興味津々で、玄関前の表札を見つめる。

そこには、「妹尾」と書いてあった。

そう。そこはふぁにの友達、ほたるの実家だった。

しかしこの時点では、まだ完全にそのことを理解していなかった。

ふぁににとってこの家は、まったく見覚えのない他人様の家でしかなかった。

…よく分からないけど、何はともあれお邪魔します。