神に選ばれなかった者達 前編

よく見ると、頭だけじゃない。

足にも腕にも、所々に包帯や、大きなガーゼが当てられている。

全身のじみ〜な痛みの理由は、これかよ。

まるで、全身を擦りむいたみたいじゃないか。

道理で痛い訳だ。

何これ?ふぁに、自転車にでも轢かれた?

…自転車だったらもっと重傷だよな。もっと小さなものに違いない。

…何?三輪車とか?

三輪車に轢かれるふぁに…。…ダサッ…。

お天道さまに顔向けて歩けねーよ。

もし本当に、三輪車に轢かれて怪我をしたのだったら。

さっきの看護師や、目の前の医者やおばさんが、呆れ返った顔をしているのも納得である。

そんな間抜けな事故があるか、って話だ。

…しかし。

「良かったですね、車の通りが少ない時間で。ラッシュの時間帯だったら、あっという間に轢かれてましたよ」

おっさんドクターが、ぼそっと呟くように言った。

…は?

それに対して、おばさんが腰を曲げて謝罪。

「本当に申し訳ありません。ご迷惑をおかけしました」

「もうすぐに退院して良いので。消毒だけ、近所の病院でしてもらってくださいね。ウチには来なくて良いですよ」

お前、本当に医者か?と言いたくなるような、ぞんざいな態度と口調で、医者はそう言い。

最後に、軽蔑の眼差しをふぁににくれた後。

もう用はなしとばかりに、さっさと退室していった。

…何?あのおっさん。

あれが医者の態度か?なぁ。

ヒポクラテスの誓い、読み直したら?

…ってのはまぁ冗談だけど。

後で知ったことだが、ふぁにはこの病院にとって、迷惑な存在以外の何者でもなかったのだ。

…すると。

「…まったく、あんたは私達に迷惑をかけずにはいられないみたいね」

は?

今度は、一人部屋に残った私服のおばさんが、ふぁにに冷ややかな眼差しを向けてそう言った。

「本当、忌々しいったら。…ほら、早く支度しなさい。帰るわよ」

…何処に?

訳が分からないけど、どうやらこの場所からさっさと去れ、ということらしい。

この人についていけば良いのか?

誰なのか知らないけど…。



…この時、この人とふぁにの関係性を知っていたら。

「病院で目を覚ました子供に向けて、最初に言う言葉がそれか!」と憤慨していたことだろう。

それを知ることになるのは、数時間後の出来事である。