神に選ばれなかった者達 前編

…何だ?あのオバハン(←失礼)。

言いたい放題言うだけ言って、出ていきやがったぞ。

出ていくなら、せめてこの拘束を解いてから行けよ。

何で簀巻きにしたまんま去るんだ。

畜生。訳分かんねぇ。今生まれたばっかだってのに。

家って何のことだ?

ふぁにの家って、何処?

それに、母親とか父親って何のことだ?誰のことだよ。

あと…それから、馬鹿なことって何だよ?

頭を冷やしなさい、ってのも意味不明だし。

頭なら冷えてるっての。

分からないことが山積みで、誰か、切実に説明を頼む。

全身の地味な痛みに耐えながら、ベッドの上でもぞもぞと、みっともなく身を捩ること数分。

再び、部屋の扉が開けられる気配がした。

「こちらです」

「…」

…誰だ?

何とか首だけを起こして、部屋の入り口を確認する。

さっきのおばさん看護師かと思ったが、違っていた。

今度は、男女の二人組みだった。

一人は、多分医者。

さっきの看護師と似たような、くたびれた白衣を着たおっさんで、首から名札をぶら下げている。

それからもう一人は、おばさんだった。

こちらは私服を着ているから、病院の関係者じゃなさそうだった。

だが、その表情は、さっきのおばさんナースよりも険しかった。

それが人様を見る態度か?ってくらい、険しい顔。

と言うより、憎しみさえ浮かんでいるように見えた。

…何だよ?

初対面なのに、何でそんなに攻撃的なんだ?

「お子さんで間違いありませんよね?」

おっさんドクターが、その不躾なおばさんに尋ねた。

「…えぇ。間違いありません」

おばさんは、溜め息混じりに頷いた。

…は?

その時のふぁには、大層間抜けな顔をしていたに違いない。

…お子さん?は?誰が?

…もしかして、ふぁにのこと?

「どうやら落ち着いてるようなんで、これ、外しますよ」

と言って、おっさんドクターが、ふぁにの拘束ベルトを外してくれた。

ようやく自由になった、ふぁにの身体。

はー、窮屈だった。

ふぁにはベッドに手をつき、よろよろと起き上がった。

あちこちズキズキ痛い上に、変な格好で拘束されていたせいで、身体が強張っている。

何だったんだよ…。…一体。

訳が分からなくて、つい頭を左右に振ってしまって。

同時に、頭部に刺すような鋭い痛みを感じた。

「…っ」

思わず、頭に手を当てる。

そこには、ごわごわとした包帯が巻かれていた。

…何これ。

いつの間にかふぁには、頭に傷を負ってしまったらしい。