神に選ばれなかった者達 前編

下らない能力だ。私の武器は。

自分でも情けなくなるくらいに。

だって、そうだろう?

こんな能力、この悪夢の中じゃ大して役に立たない。

現実だったら、命は一つしかないから。

回復能力、治癒能力は、とても役に立つものとして重宝されるだろう。

でも、この夢の中じゃ、命は無限なのだ。

何度死んだって、死ぬほど痛い思いをするだけで。

死んだ後は、ちゃんと時間が巻き戻って生き返る。

無限に「死に戻り」出来るのに。

いちいち傷を治すことに、何の意味がある?

しかも私の治癒能力は、こうして、自分の血を…自分の命を捧げることを代償にして、初めて可能なのだ。

そんな面倒なことせずに、二人共一回死んだ方が話が早い。

おまけに、ご覧の通り。

この能力を使った後は、大抵、私は貧血を起こし、ろくに戦える状態ではない。

つまり、みんなの…お兄ちゃんの、足手まといになるのだ。

だから普段、私はこの能力を使わなかった。

役に立たないし、それにお兄ちゃんに止められていたせいでもある。

能力の代償は、私の血。

私が血を流すことによって、傷を癒やす。

私が傷つくところを見たくないお兄ちゃんはいつも、「のぞみはそんなことしなくて良い」と言って、治癒能力を使わせてくれなかった。

ただでさえ役に立たない能力なのに、使わなかったら、もっと役に立たない。

不甲斐ない。みんなの役に立てなくて情けない。

いつもいつも、お兄ちゃんに守られているだけ。

だから代わりに、今度はお兄ちゃんを守りたい。私を守ってくれる大切な存在を、私もまた、同じように守りたい。

私の為に傷ついてくれるのならせめて、私もその痛みを共にしたい…。

…そんな願いが、私のこの中途半端な治癒能力を目覚めさせたのだろうと、そう思っている。

私は真っ青だったけど、お兄ちゃんは顔色が良くなっていた。

…良かった、お兄ちゃん…。…傷、治って。

「のぞみ…。僕の為に、こんな…」

「…良いの…。お兄ちゃんの痛みに比べたら…このくらい…」

何でもないよ。…そうでしょ?

お兄ちゃんはもっともっと…ずっと、辛い思いをしてきたんだから…。

せめて、ほんの少しでも…その痛みを肩代わり出来たら…。

…私にとって、それ以上の喜びはない。





…その時だった。

ドン、ドン、と。病室の扉を乱暴に叩きつける音が聞こえた。

…あぁ。

私達がここに隠れていることがバレたらしい。