神に選ばれなかった者達 前編

生贄に選ばれた者達は、何かしら、必ず武器を持っている。

お兄ちゃんが鉄パイプを、李優さんが背中の翼を、ふぁにさんが弓矢を。

響也さんが錐を、みらくさんが手榴弾を、それぞれ武器として持っているように。

私の持つ武器は、これなのだ。

私自身の血。

その血を仲間に捧げることで、その仲間の傷を癒やすことが出来る。

例え致命傷だとしても、こうして治すことが出来るのだ。

「…のぞみ…」

「はぁ…はぁ…」

お兄ちゃんの傷は、みるみるうちに治っていった。

その代わり、私は真っ青になっていた。

原因は分かっている。貧血だ。

私の身体の中の血が、徐々に足りなくなっているのだ。

捧げる血の量は、相手の傷の程度に比例する。

かすり傷程度なら、数滴の血を捧げるだけで癒える。

でも…今みたいに、致命傷を治そうと思ったら。

捧げる血の量も格段に増え、命の危機さえ感じるほどだった。

…どうしよう。段々、目の前が暗くなってきた。

まだ完全には癒えてないのに…。お兄ちゃんの傷、全部治してあげたいのに…。

このままじゃ、その前に私が、出血多量で死んでしまう…。

ぐるりと世界が一回転して、私はその場に倒れそうになった。

そんな私を、お兄ちゃんが抱き留めた。

血の気がなくなった私に反して、お兄ちゃんはかなり回復したようで。

しっかりと、私を抱き締めた。

そして、私の手からガラスの破片をもぎ取った。

「…もう良い、もう良いよ」

「お…お兄、ちゃん…」

今…まだ、止めないでよ。

傷…治りきってないはずなのに…。

「ありがとう、のぞみ。お陰で助かった…もう大丈夫」

「お兄ちゃん…。私、ごめんなさい…。こんなことしか…」

お兄ちゃんは私の為に、死にそうなくらい痛い思いをしてくれたはずなのに。

私には、こんなことくらいしか出来ない。

いつだって私は、お兄ちゃんの足を引っ張るばかりで…。

…それなのに。

「充分だよ、のぞみ…。ありがとう。助かったよ」

お兄ちゃんは、優しくそう言ってくれた。

「だから、もうやめてくれ…。これ以上は、のぞみが死んでしまう…」

「…」

私が死ぬくらい、何だって言うの。

全然怖くない。何ともないよ。

…これまで、お兄ちゃんが私の為に傷ついた、その痛みに比べたら。