神に選ばれなかった者達 前編

「お兄ちゃん…。お兄ちゃん、ごめんなさい…」

謝っても無駄だと分かっていた。

私のせいで死の痛みを味わわせているのに、「ごめんなさい」で済むはずがない。

私は間接的に、お兄ちゃんをこの手で殺しているようなものだ。

それは分かっている。分かっているけど…謝らずにはいられなかった。

「私のせいで…。…私の…」

「…のぞみの、せいじゃないよ」

苦しいはずなのに。

怖くて辛くて、叫び出したくなるほど痛いはずなのに。

お兄ちゃんは、私に微笑んでみせた。

私を心配させないように。私が自分を責めずに済むように。

「だい…じょうぶ、だから。死んでも…お兄ちゃんは…ちゃんと生き返るから…」

「駄目だよ…そんなの…」

生き返るから死んでも良いなんて、そんなはずないでしょ。

こんな…こんなに痛い思いをして…。

…私に…出来ることは、何か…。

「…!」

そうだ。

出来ること、あるじゃないか。…私にも。

すぐさま「それ」を決意した私は、周囲を見渡して、使えそうなものを探した。

刃物…何か刃物は…。

…そうだ、窓

床に転がっていた、お兄ちゃんの鉄パイプを手に取った。

そして窓に駆け寄り、鉄パイプをフルスイングして窓を叩き割った。

かなり頑丈な窓だったけど、渾身の力を込めて何度も殴りつけると、ついにヒビが入った。

私は、その窓ガラスの破片を素手で鷲掴みにした。

「の…のぞみ…?」

お兄ちゃんは私の行動の意図を計り兼ねて、怪訝そうな表情だったが。

「お兄ちゃん…待ってて。今、楽にしてあげるから…」

私は窓ガラスの破片を持って、お兄ちゃんに近づいた。

その私の決意を秘めた両目で、お兄ちゃんはようやく気づいたようだった。

私が、これから何をしようとしているかを。

「のぞみ…まさか…」

「大丈夫…。これ以上、お兄ちゃんに痛い思い…させないから」

「駄目だ、のぞみ。やめてくれ…。お兄ちゃんのことは…放っておいてくれ…」

「…嫌よ」

いくらお兄ちゃんの頼みでも、今ばかりは聞けない。

私は、怯えて真っ青になっているお兄ちゃんに歩み寄り。

ぎゅっと、強く窓ガラスの破片を握り締め。

そして、高くその破片を振り上げ。

「…っぐ…!!」

強く、強くぐさりと突き刺した。







…私自身の、二の腕に。