神に選ばれなかった者達 前編

一体何をさせたいと言うの。

…こんなものを私とお兄ちゃんに見せて、一体何を言いたいの。

この卑怯者、とでも言いたいの?

過酷な生存競争に負け、死んでいった子供達の死体を見せつけて。

「お前達のせいで」って、そう言いたいの?

「…やめて…」

私は、思わずそう呟いていた。

やめてよ…。そんな、恨み言。

やめて。そんな目で私を見ないで。

「偽者の癖に」なんて言わないで。

「そこはお前の居場所じゃない」なんて。

「やめて…やめて!」

私だって…私とお兄ちゃんだって…。

好きで、あんな風に生きてきた訳じゃ、

「…のぞみ!」

お兄ちゃんに強く肩を揺さぶられて、私は正気に戻った。

「…!」

気づくと、部屋の中にいたはずの黒衣人間達がこちらを見ていた。

私が大声を出してしまったせいだ。

「ダャシウュニンシ!」

黒衣人間が、何か分からない言葉を叫んだ。

そして、あろうことか。

その内の一人が、ピストルのようなものをこちらに向けた。

ピストルだったら、「バン!」って音が鳴るものだと思っていたけど。

黒衣人間がピストルの引き金を引くと、もっと気の抜けたような音がした。

ヒュッ、っていう、ピストルらしからぬ音。

でも、その威力は普通のピストルどころじゃなかった。

「きゃぁぁっ!」

「のぞみ!!」

ピストルが命中して、私達が覗いていた窓が粉々に割れた。

嘘でしょ。たった一発で?

お兄ちゃんが慌てて私の身体を突き飛ばすようにして、床に伏せたお陰で。

何とか、ピストルの餌食にはならずに済んだ。

窓の破片が雨あられのように降ってきたけど、そんなことには構っていられなかった。

狙いを外したと知った黒衣人間達が、確実にこちらを仕留める為に駆け寄ってくるのが分かった。

こうしてはいられなかった。

「のぞみ、立って!」

お兄ちゃんが、私を急かして立たせた。

膝が笑っていたが、躊躇っている暇はない。

お兄ちゃんに支えられるようにして、私は走り出した。

お兄ちゃんは、私を先に走らせた。

そして私を守る為に、私の背後にぴったりとついて盾になった。

「ナスガニ!!」

迫り来る黒衣人間が、ピストルをこちらに向けてきた。

ヒュッ、ヒュッという独特の発砲音が、背中越しに聞こえてきた。

いつそのピストルの弾が、自分の背中を掠めるかと怯えながら。

私とお兄ちゃんは、全速力で駆け出した。