神に選ばれなかった者達 前編

これは…これは何なの。

人間なの?…動物?生き物なの?

保育器の中には、先程殺された赤ん坊に似た「何か」が、蠢くように横たわっていた。

身体の穴という穴にチューブや管や、注射針を突き刺されて。

ガサガサの皮膚をした背中に、奇妙な突起物が出来ている。

背中に、獣のような毛が生えているものもいる。

ドス黒い肌をしたモノもいれば、血が通っていないほど青白い肌のモノもいる。

目が無いモノもいれば、口がないモノ、耳がないモノ。

逆に、目が3つも4つもあるモノ、口と目が反対の場所についているモノ、耳の場所に歯が生えているモノ…。

腕が3本もあるのに、足は1本しかないモノ。

足が腕の場所に生えているモノ、腕も足も1本も生えていないモノ。

胸から腕が突き出ているモノ、首から足が生えているモノ…。

何もかもがちくはぐで、あやふやで、めちゃくちゃで。

不気味で異様で、吐き気がするほどに気持ち悪かった。

「何なの…。これ、何なの…?」

私は思わずそう呟いていた。

もしかして、これ…ここにいるのは…。

さっきの分娩室で生まれた…この病院で生まれた赤ん坊なの…?

…さっきの子は、生まれた時に処分されていた。

だけどここにいる子供達は、何らかの理由があってか、こうして保育器に入れられて生かされている。

殺された子と、生かされている子の間に、どんな違いがあるのか私には分からない。

…分かりたくもない。

でも、ここがとんでもなく異常な場所だということは確かだった。

「…!あれは…?」

お兄ちゃんが、何かに気づいた。

お兄ちゃんの視線の先には、檻があった。

高い柵で囲われた、さながらベビーサークルのような。

そこに、似たような赤ん坊が何人も入れられていた。

保育器で生かされている子供達は、まだ幸運だった。

その…ベビーサークルに入れられた子供に比べれば。

ベビーサークルの中の子供は、今にも死にかけているように見えた。

遠目からでも分かる。

どの子も血の気がなくぐったりとして、時折びくっ、と反応するから、何とか生きているのだと分かるけど。

中には、そんな僅かな反応もせず、身動き一つしない子もいる。

何人かは、もう死んでいるんじゃないかと見紛うほどだった。

しかし。

「…!」

その時、部屋の中に。

僅かに膨らんだズタ袋を持った黒衣人間が数人、突然入ってきた。

私とお兄ちゃんは、すぐさま身を伏せて隠れた。

そして、こっそりと部屋の中の様子を伺った。

見ない方が良いのは分かっていた。

しかし、今更目を逸らすことは出来なかった。