神に選ばれなかった者達 前編

――――――…ゾンビを倒した翌日。

放課後、友達と一緒に、高級雑貨店で誕生日プレゼントを購入したその日の夜。

お兄ちゃんが私を探して、叫びながら近所を走り回る、という奇行を行ったせいで。

お兄ちゃんに、買ってきたマフラーを渡す暇もなく夜を迎えた。

まぁ、良いや…。明日以降でも渡せるんだから…。

…しかし、この日の夜見た悪夢のせいで。

プレゼントどころじゃなくなるということを、私はまだ知らない。






「…ん…」

現実で眠りについた私は、夢の中で目を覚ました。

そこは、もう学校ではなかった。

どうやら、新しい舞台に変わったようだ。

「…?」

…何処だろう、ここ。

広くて、真っ白な廊下。

窓はあるけど、窓には鍵がかけられて、おまけに鉄格子が取り付けられていた。

…凄く厳重な施錠。

絶対に外には出さない、という強い意志を感じる。

この時点で、何だか不穏なものを感じていた。

私は、きょろきょろと周囲を見渡した。

…お兄ちゃん、何処だろう。

私は武器の特性上、自分で戦うのは難しい。

一人では、あまりに不利だった。

それに、お兄ちゃんが傍にいないと、私は…。

…すると。

「…!」

背後から、ぞっとするような気配が近づいてきた。

私は、急いで身を隠せる場所を探した。

何年もバケモノ退治をする夢を見続けて、学んだことだ。

バケモノと鉢合わせしてしまったら、ほぼ間違いなくこちらが殺されてしまう。

ならば、まずは戦うよりも身を隠し。

少しでも相手の弱点や急所を探して、不意打ちに徹した方が良い。

卑怯な戦法のように思えるが、卑怯でも何でも、勝つことが出来ればそれで良いのだ。

しかし。

周囲は見渡しの良い、白くて広くて、明るい廊下。

隠れられる場所はなさそうだった。

でも、足音は段々と近づいてきていた。

…どうしよう。逃げなきゃ。

廊下の壁沿いには、ずっと向こうまで、横開きの部屋の扉が連なっているだけ。

逃げようと思ったら、何処かの部屋の中に逃げ込むしかなかった。

でも、その部屋の中にもバケモノがいたら?

私は、自らバケモノの檻の中に入り込むようなものだ。

私が躊躇っている間にも、どんどんとバケモノの気配が近づいてきていた。

…駄目だ。もう考えてる余裕がない。

どうせ殺されるのなら、少しでも逃げられる可能性の高い方に賭けるしかなかった。

私は意を決して、近くにあった部屋に逃げ込むことにした。