――――――…あの日。
人面犬に襲われる悪夢を見たあの日。
自分の身を人面犬に食わせることで、のぞみを逃がした、その夜が明け。
再び、夜がやって来た。
「のぞみ…。…そろそろ、寝よう」
「…」
すっかり日が暮れ、眠る時間になっても。
のぞみは、ふるふると首を横に振った。
…そっか。
「眠くないの?」
「…ううん。…眠い…」
だよね。
昔から、日が暮れたら眠って、日が昇ったら起きる、という動物みたいな暮らしをしてきた。
そのせいで、日が暮れると眠くなるという体内時計が出来上がってしまっていた。
夜ふかしをする人の気が知れない。
寝る子は育つんだよ。夜は存分に寝よう。
寝るっていうのは良いね。最高に安上がりな娯楽だ。
のぞみも、夜はよく寝る良い子だったが。
それでも、今夜ののぞみは…。
…いや。
ここ数日に渡って、人面犬に襲われる悪夢を見るようになったのぞみは。
毎晩、眠ることを躊躇っているようだった。
…無理もない。
僕だって、昨日同じ悪夢を見た。
そしてその悪夢の中で、のぞみがこれみで、どれほど辛い死の痛みを味わってきたかを知った。
…夢の中であんな痛みを味わうことが分かっているなら、ハナから眠りたくないと思うのは当然だ。
分かるよ、気持ちは。
…だけど。
「のぞみ…。…ずっと眠らない訳にはいかないよ」
「…」
人間、数日食べないくらいじゃ死なないが。
数日眠らなかったら、本当に倒れてしまうからね。
実際のぞみは、眠ることを拒みつつも、既に眠そうに目を擦っている有り様。
…朝まで起きてるのは無理だよ。
怖いんだよね。…でも、大丈夫。
「大丈夫、心配しないで。お兄ちゃんが守ってあげるから」
僕は、これまで何度も言った言葉を。
そして、これからも何度も言うことになる言葉を、またのぞみに言った。
人面犬に襲われる悪夢を見たあの日。
自分の身を人面犬に食わせることで、のぞみを逃がした、その夜が明け。
再び、夜がやって来た。
「のぞみ…。…そろそろ、寝よう」
「…」
すっかり日が暮れ、眠る時間になっても。
のぞみは、ふるふると首を横に振った。
…そっか。
「眠くないの?」
「…ううん。…眠い…」
だよね。
昔から、日が暮れたら眠って、日が昇ったら起きる、という動物みたいな暮らしをしてきた。
そのせいで、日が暮れると眠くなるという体内時計が出来上がってしまっていた。
夜ふかしをする人の気が知れない。
寝る子は育つんだよ。夜は存分に寝よう。
寝るっていうのは良いね。最高に安上がりな娯楽だ。
のぞみも、夜はよく寝る良い子だったが。
それでも、今夜ののぞみは…。
…いや。
ここ数日に渡って、人面犬に襲われる悪夢を見るようになったのぞみは。
毎晩、眠ることを躊躇っているようだった。
…無理もない。
僕だって、昨日同じ悪夢を見た。
そしてその悪夢の中で、のぞみがこれみで、どれほど辛い死の痛みを味わってきたかを知った。
…夢の中であんな痛みを味わうことが分かっているなら、ハナから眠りたくないと思うのは当然だ。
分かるよ、気持ちは。
…だけど。
「のぞみ…。…ずっと眠らない訳にはいかないよ」
「…」
人間、数日食べないくらいじゃ死なないが。
数日眠らなかったら、本当に倒れてしまうからね。
実際のぞみは、眠ることを拒みつつも、既に眠そうに目を擦っている有り様。
…朝まで起きてるのは無理だよ。
怖いんだよね。…でも、大丈夫。
「大丈夫、心配しないで。お兄ちゃんが守ってあげるから」
僕は、これまで何度も言った言葉を。
そして、これからも何度も言うことになる言葉を、またのぞみに言った。


